君は陽だまり

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君は陽だまり

 夢で出会った架空の女の子に恋をする。

 君は陽だまり。僕の心を明るく照らす。名前もヒダマリ。ぴったりの可愛い可愛い名前だ。漢字は分からないし苗字なのか下の名前なのかフルネームなのかも知らないけれど、とにかく僕はずっとヒダマリのことが好きだ。めっちゃ好きだ。大好きだ。どうしよう、ってぐらい好きだ。一挙手一投足が。すべての表情が。横顔が。正面からの顔が。嬉しそうな顔もそうでないときの顔も。声も。後ろ姿も。見たことないけどきっと真上から見ても。全部が。大好きなんだ。

 ヒダマリの笑顔を思い浮かべると心臓がきゅっと自分のものじゃなくなったみたいに縮まってたまらなく切なくなる。胸が張り裂けそうになる。このまま張り裂けてしまえばいいのにと思う。どうしようもなく会いたくなる。

 でもこれは夢で、ヒダマリは架空の女の子で、僕はどこへ行けば彼女と会えるのかも分かっていない。どこでどう出会ったのかすら思い出せない。ヒダマリを好きだという気持ちだけがあって、他の感情なんてほとんど失くしてしまっている。もうずっと途方に暮れている。君は雲だ。僕の心に雨を降らす。

「目を覚ましちゃえよ」

 とたぬきが僕に言う。知らない町に僕はいて、いかにも老舗って感じな店構えの蕎麦屋の前でたぬきの置き物と喋っている。喋るたぬき。

「やだよ」

 目覚めたくない。

「どうして? これ夢だぜ?」

「知ってるよ」

 夢じゃなきゃたぬきの置き物が喋るわけがない。いつ気づいたのかは思い出せないけど僕は自分が夢の中にいるということをちゃんと自覚している。

「会いたいのにどうすれば会えるか分からなくて寂しいんだろ? 起きちゃえよ。この夢を終わらせればいい。そうすれば楽になれるぜ?」

「絶対に嫌だ。この夢から目覚めたらもう二度とヒダマリに会えなくなるだろ」

「覚めない夢はないんだぜ」

 うるせーな、って気持ちになる。

「これは僕の夢だから。あんただって僕の夢の登場人物なわけじゃん」

 人物、というか置き物だけど。ぼてっと丸くて可愛いけれど口調は生意気な信楽焼のたぬき。

「あんたとか言うなよ」

「ん?」

「俺にだって名前ぐらいあるんだから名前を呼んでくれよ」

「あ、はい。すいません。なんて名前ですか」

「野田です」

「僕が目を覚ましたら野田さんだっていなくなっちゃうわけでしょ?」

「それはどうかな」

 え、そうなの? この夢から僕が目覚めても夢の中の世界はどっかで続いていく的な?

「いや、分かんないけど。俺だってお前のこの夢の中でしか生きてたことないから。お前が起きたとき俺らがどうなるのかは知らない」

 なんだ。人には名前で呼べと言ってくるくせに自分は僕のことお前呼ばわりだ。

「どうすれば会えるんだろう。ヒダマリに」

 と自分でこぼして泣きそうになる。ああ好きだな、と実感する。

「さあな。これはお前の夢だから。お前に分からないことはなかなか俺には分からないぜ」

「手伝ってよ。探すの」

「無理だよ。俺たぬきだし。置き物だし。動けないし」

 肩を落とす僕を不憫に思ったのか、

「ま応援はしてるぜ? 頑張れよ」

 とたぬきが言ってくれる。

「ありがとう」

「でもあんま人に頼るなよ? 好きな女の子は自分で見つけなきゃダメだぞ」

 確かにその通りだ、と思う。生意気だけど良いたぬきだ。僕はヒダマリを探さなくてはいけない。この夢の中のどこかにいるはずの君を。


 僕は歩く。今度は知ってる道を。小さい頃、毎日通っていた小学校への通学路だ。

 でも夕方で、空は赤くて、遠くから五時のチャイムが聞こえてきて、どうしてこの時間に学校へ向かっているのかは分からない。まあ夢だし。いちいち全てに理由を求めても仕方ないよな、とヒダマリを探して歩いていると、道の向こうからすごいスピードで人が走ってくる。

 違う。しゃっしゃっしゃ、と左右に揺れるあの動きは走ってるんじゃなくて滑ってるんだ。ローラーブレードだ。懐かしい。小学生の頃によくやってた。

 でもいま僕の方に向かって猛スピードで滑って来るあの人は小学生じゃなくて大人だ。背広を着た男の人だ。ローラーブレードで通勤してる人? と不思議な気持ちで見てると彼はいったん僕を通り過ぎた後に急にターンして止まってすたすた戻ってきて、

「どうも。こんにちは」

 自然な感じで挨拶してくる。

 あれ知り合い? 見覚えない顔だけど……と戸惑いつつも、

「どうも」

 と頭を下げる。結構高そうなスーツをビシッと着こなして顔立ちも整っててカッコいいのに足元はローラーブレードで笑える。変な人だ。まあ夢だし。

「キジさんですよね?」

 と彼は尋ねてきて、

「ん? や、違いますけど」

「あれ? キジさんじゃないですか?」

「違います」

「うそ。マジか」

 弱ったな、って感じで彼は後頭部を掻く。

「人違いですよ」

「おかしいな。本当にキジさんじゃないですか?」

「違いますって」

「本当に?」

「違うって言ってるじゃないですか」

 しつこいな。誰だキジさんって。知り合いにもいない。

「失礼ですけど、あなたは?」

「あ、はい。申し遅れました。私は桃太郎です。苗字はないんですが。お初にお目にかかります」

「お初にお目にかかります」

 彼はスーツの上着の内側に手を入れて、名刺くれるのかな? 僕名刺もってないや、と見てたら違くて、きちんと包装されてるボックスティッシュぐらいの大きさの箱を取り出してくる。あれ? 全然上着膨らんでなかったのにどこ入れてたんだ? とびっくりしてると、僕の驚きを察したようで、

「四次元ポケットになってるんですよ。このスーツの内ポケット」

 すげえ。ちょうカッコいい。

 桃太郎さんは取り出した箱を僕に渡してくる。

「つまらないものですが」

「はあ」

 受け取る。

「なんですか、これ」

「きび団子です。一緒に鬼が島に行ってほしいんですよ」

「僕がですか?」

「このきび団子差し上げますんで」

「いやいや。無理です」

「え。無理とか言わないでくださいよ」

 断られるとは思ってなかった、みたいに言ってきてこっちが驚く。

「無理ですって」

「そこをなんとか。キジさんの力が必要なんですよ」

「僕キジじゃないですよ」

「キジじゃなくてもいいんで」

「いいんすか」

「なんでもいいんで。来てくださいよ。頼みます」

 桃太郎さんは深々と頭を下げてくる。

 困ったな。きび団子いらないし鬼ヶ島とか行きたくないし僕はヒダマリを探さなくてはいけないのだ。他のことしてる暇なんてない。

「すいません。僕、他にやることあるんで」

「ああ。ヒダマリちゃんを探してるんですよね」

「そうです」

 僕の夢の登場人物だから僕がヒダマリのこと大好きだってことぐらい分かってるんだろう。

「あ」

 と思いついて僕は訊く。

「もしかして鬼ヶ島にいるとか? ヒダマリが」

 鬼にさらわれている?

 なら何としてでも助け出さなくてはいけない。いますぐに。いますぐ行く。

「や、そういうのではないです。そういうのはないです」

 安心する。よかった。

「ヒダマリちゃんがどこにいるのかは私も知らないです。全然知らない」

「そうですか」

「ごめんなさいね。力になれなくて」

「いえいえ」

 自分で探すから大丈夫だ。

「会えるといいですね」

「ありがとうございます」

「鬼ヶ島は居酒屋です」

「は?」

「居酒屋鬼ヶ島。三時間飲み放題千円、プラス三百円で生ビール付き」

「居酒屋なんて行ってる暇ないですよ」

「そこをなんとか。来ていただきたいんです。大丈夫、お金はこっちが払いますんで」

「いや、お金の問題じゃなくて」

「女の子が四人くるんで、猿と犬と僕と、あと一人必要なんですよ」

「は? 合コンですか?」

「ですです」

「行くわけないですよ」

 好きな人いるし。この人もヒダマリのこと知ってるはずなのに。

「そこをなんとか」

「行かないですって」

「どうしても?」

「どうしても。てか人数合わせなら僕じゃなくていいじゃないですか」

「嘘だよ」

「は?」

「合コンなんて嘘。これは夢で、君の想い人は架空の女の子で、僕の言ってることは全部嘘」

 おちょくってるんだろうかこの人は僕を。腹が立ってくる。もういいや。シカトしよう。立ち去ろう。早くヒダマリを探そう。

「これ」

 僕は手に持ったまんまだったきび団子の箱を突き返す。

「いらないんで。お返しします」

 しかし桃太郎さんは受け取ろうとしない。

「いいよ。持ってってよ」

「結構です」

「夢の中でもお腹は空くから。そしたら食べてよ。必要になるときが来るから」

 必要になるとき? どんなときだ……と一瞬箱に目を落とした隙に、桃太郎さんは身を翻してしゃっしゃっしゃ逃げるようにローラーブレードで滑り去ってしまう。

 お腹は全然空いてなくて、ただただヒダマリに会いたい。

 やがて夜がやって来る。それだけで僕の寂しさは深まる。

 夜空に月が浮かんでいて、少ないけど星もいくつか見えて、でもヒダマリは僕の見えるどこにもいない。あの月をヒダマリもどっかで見てるのかな、と思う。見てるんじゃないかな、という気がする。分かんないけど。でも見ていてほしいと思う。あの月に向かって僕は歩くことにする。

 そうすればヒダマリに会えるんじゃないかと期待して。何の根拠もないけれど。でも会えるに違いないと信じて。僕は歩く。歩き続ける。長いんだか短いんだかよく分からない時間が過ぎて、車も人も誰もいない通りで、街灯に照らされた寂しいバス停を見つける。

 停留所の名前は書いていない。どこへ向かうバスが停まるのかも書かれていない。

 でもバスは来て、扉は開いて、僕の中には乗るべきだという気持ちがあって、乗る。

 運転手さんは帽子を目深に被っていて顔が見えない。ステップを上がっても僕の方を見ようともしない。

 いくら払えばいいのか分からなくて、適当に小銭を箱に入れて、車内を見渡すと他に乗客はいない。広告も何も貼られていない車両の一番後ろのシートに僕は腰を下ろす。アナウンスも何もない。バスがゆっくりと発車する。本当にゆっくりと。のろのろ運転だ。だんだん加速するのかな? と思ってるけどずっととろとろ走ってる。まあいいや。ヒダマリのところに連れてってくれますようにと僕は願う。ヒダマリに会えますようにと祈る。ずっと歩いてて、落ち着いて、急にお腹が空いてくる。わあ。桃太郎さんが言ってた通りだ。夢の中でも空腹を感じるんだ。

 きび団子を食べることにする。疲れた体に甘いものはちょうどいいだろう、と包装を解いて箱を開けて、しかし、中に入っていたのは団子ではなくて一丁の古いピストルだった。

 なるほど。

 何に納得したのか自分でもよくわからないけど、なるほど、って気持ちに僕はなる。銃身が銀色で持つとこが黒いリボルバーだった。

 手に持ってみるとずっしり重くてきっと本物なんだろう。弾も入ってるっぽい。必要になるときが来るから、と言って桃太郎さんはこの箱を僕に渡した。撃てるのかな。映画とかでしか見たことないけど。

 ピストルが必要になることがこれから起こるのだとして、何が待ち受けているのか想像もつかないし恐い気持ちもあるけど、まあこれは僕の夢だし何とかなるだろうと前向きに考えることにする。ヒダマリへの会いたさ以外の全ては僕にとって些細なことなのだ。とるに足らないことなのだ。君を中心に僕は動いているんだ。

 と考えて、そうか、この世界の中心へ行けばヒダマリに会える、と思いつく。これは僕の夢なのだ。僕の中心に君がいるんだ。

 間違いない。

 ほとんど確信に近い。

 このバスはどこへ向かってるんだろう……と窓の外を見ると、闇で、どれだけ目を凝らしても何も見えてこない。

 僕は席を立ち、前に進んで運転手さんに声をかける。

「このバスってどこ向かってますか?」

「ん?」

 運転手さんは前を向いたまま、

「世界の端っこです」

 真逆じゃん。何やってんだ。ヒダマリから遠ざかっていたんだ。

「行き先を変えてもらいたいんですけど」

「無理ですよー。これバスですもん。タクシーじゃないんだから」

「じゃ、ここで降ろしてください」

「それもできませんよー。停留所は決まってますんで」

「次ってどこ停まります?」

 僕が乗車してからこのバスはどこにも停まっていない。

「次ですか? 終点ですね。世界の端っこ」

 それはダメだ。世界の端がどんな場所なのかは分からないけど戻ってこれなくなりそうだ。

「ですね。戻ってこれなくなりますね」

 と、まるで僕の心の声が聞こえたかのように運転手が言ってきて、いや、実際に聞こえているんだろう。

「その通り。聞こえてます」

 なら僕がどれだけ降りたいのかも分かってるだろ。

「降ろせよ」

 と敢えて声に出す。

「ダメです。世界の端まで連れて行くのが僕の役目なんで」

 役目? なんだそれ。世界の端に何があるんだよ。

「何もありませんよ。夢の外に出るんです。目を覚ますんです」

 こんなバス乗らなきゃよかった。

 と起きてしまったことを悔いている暇はない。考えなきゃ。この夢に留まる方法を。

「ま、どれだけ考えてもその考え全てダダ漏れですけどね」

 そうなのだ。たとえば僕はいま右手に持ってるピストルでこの運転手の頭を撃ち抜く選択肢について考えているけど、そう考えていることも見通されているのだ。

「その通り。ちなみに僕も銃、持ってますからね。あなたが銃口をこちらに向けるよりも先に、私が撃ちます」

 なんでバスの運転手がピストル持ってんだよ。

「夢だからですよ。あなたの。そして僕の」

 と言って初めてこちらを振り向いた運転手の顔を僕は知っている。僕だ。この運転手は僕自身だ。

「なんだよこれ」

「なんだよも何も。夢ですよ。全てが」

「それは知ってるけど。降ろせよ。いますぐ、ここで」

「嫌だよ」

 もう一人の僕が立ち上がって、僕は僕自身と向かい合う。運転席に誰もいなくなってもバスは走り続けている。世界の端っこへ向かって。

 何がしたいんだ。

「分かるでしょ。目を覚ましたいんですよ。僕は」

 どうして。

「寂しいから。寂しいでしょ?」

 寂しい。

「苦しいでしょ」

 苦しい。

「でしょ。だから僕はこの夢を終わらせたいんですよ。楽になりましょうよ」

 そしたら二度とヒダマリに会えなくなる。

「いまだって会えないんだから」

 でもこの夢のどこかにいる。僕にはそれが分かるし、お前も僕なら分かってるはずだ。

「覚めない夢はないんですよ」

 知ってるよ。たぬきも言ってた。

「いつか必ず目を覚ますときが来るんですよ。なのに現実には存在しない、架空の女の子に夢中になって、どうするんですか。そんなことしてたら目を覚ましたとき辛くなるだけでしょう。いつまでも夢見てないで現実見ましょうよ」

 ヒダマリのいない世界で目を覚ました僕の気持ちを想像してみて、涙がこぼれそうになる。

「でしょ? 虚しいんですよ。だからいまのうちに目を覚ませ、って言ってるんですよ。これ以上気持ちを膨らませる前に。膨らめば膨らむほど起きたときの虚しさは増すから。ま、もう充分膨らんじゃってるけどね。でも早いに越したことはないし」

 君は架空の女の子。目が覚めたら二度と会えない。

 リアルじゃない恋に囚われるのは虚しいことなんだろうか?

 棒立ちになってしまった僕に、もう一人の僕が突然、

「わああああ!」

 と奇声を上げて襲い掛かってくる。

 何だよその声、だせえ、と僕は思う。こいつも僕だから、喧嘩慣れとかしてなくて、不意打ちで攻撃するのに力んで変な声出ちゃったんだろう。そして僕も僕で喧嘩に慣れてないから、完全に不意を突かれて、もうひとりの僕の精一杯のタックルをモロに喰らってしまう。

 背中から地面に倒れて頭を打った僕に僕が馬乗りになる。

 首を絞められる。本気で。殺そうとしている。殺そうとしている、ということが僕も僕だから分かる。

「大丈夫。これは夢だから。ここで死んでも目を覚ますだけだ」

 と僕が言ってくるけど夢の中でも苦痛はリアルで全然大丈夫じゃない。息ができなくて、声も出せなくて、脳に血が溜まってくるのが分かって、意識が朦朧としてくる。薄れる視界に映っている、僕の鬼のような形相。僕が僕を絞め殺そうとしている。死んでしまう。終わってしまう。この夢が。ヒダマリのいるこの夢が。

 いいのか?

 と自分に問うまでもない。

 駄目だ。

 と消えかかってる意識に浮かぶのはなぜだ?

 簡単だ。

 ヒダマリのことが好きだからだ!

 まだまだ大好きでいたいからだ!

 僕は僕自身に向かって叫ぶ。声にならない声で。でも声にならなくても僕の叫びは僕に聞こえているはずだ。お前も僕なんだから分かっているはずだ。目が覚めた後のこと? 辛い? 哀しい? 虚しい? そんなのがなんだっていうんだ。いまなんだ。僕はいまにしか生きていないんだ。いま! この瞬間の! ヒダマリを好きだという気持ち! 君が架空の女の子でも! この気持ちは本物なんだ! いつか手放さなければいけない気持ちだとしても! ヒダマリを好きでいて僕は幸せなんだ! この幸せは本物なんだ! 大好きなんだ! 目覚めたくなんかないんだ!

「わああああ!」

 と僕もまたかっこ悪い声を上げている。

 首を絞める手の力が弱まり、やがてなくなる。

 ゆっくりと目を開くと、もう一人の僕が半透明になっていて、だんだん薄れていって、消える。

 僕は僕を消した。殺した。もう一人の僕を。息を吸い、吐いて、重い身体を起こす。

 バスは停まり、夜は明けて、夢は続く。僕はバスを降りる。

 森の入口がそこにある。暗く深い森が。

 入っていく。かろうじて道と分かる道を僕は進み、しかし、すぐに道はなくなり、それでも進む。森の奥へ。静かで、風が吹くと葉の擦れる音が聞こえて、小枝を踏むと乾いた音がする。季節は分からないけど寒くなり、空腹も覚え、足も痛くなってくる。それでも引き返さずに進み、長い長い時間、進み、そして陽だまりに出る。

 ぽっかり空いた空間で、緑の草の絨毯に陽射しが優しく降り注いでいて眩しい。

 腰かけるのにちょうどいい岩があって、手のひらで触れると温かくて気持ちいい。

 座り、ぼんやりしてたら夢の中なのに眠くなってきて、このまま寝ちゃおうかな、とあくびをしながら考える。

 君は陽だまり。何をしていても君のことを思う。いつか君のいない世界で目覚めても、この温かさは永遠に僕の中に残る、そう忘れるはずがないんだ。

 とはいえ僕はまだ目覚めてなくて、この夢を見続けている。ここに陽が降り注ぐ限りこの場にずっといたいと思う。

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君は陽だまり Y @kinuko_a

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