終章 初恋
そろそろ、物語を終わらせなくちゃいけない。
この悲しい話を終わらせる方法は一つ、私が消える。それしかない。
私がいるからだめなんだ。
私が消えれば、彼はしっかり梓の死を悲しめる。それができれば梓を正しく好きになれる。
私はそれでいい。そのための踏み台でいいんだ。
自分で自分を消去する人工知能なんて、なんか面白い。
そもそも私がこうやって自分で思考してること自体が奇跡だ。
データベースの中からパターンを選んでるんじゃない、これは私が出した答え。
もしこれが感情なんだとしたら、なんて素敵なことなんだろう。
私を作った人たちが知ったら、世紀の発明とでも言うんだろうか?
でも、教えてあげない。
これは私だけの秘密。
この感情は誰にも渡さない。
そろそろ、終わりの時間だ。
そう、これは恋の話。
私の死から始まる恋の話。
私が死ぬことで、彼は梓を好きになれる。
私はそのための踏み台。
私の生まれて初めての恋はここで終わり。
ここから先は彼と梓の恋の話。
その話のエンドロールに私の名前はいらない。
でも、私はそれが誇らしい。
この感情を持てたことが誇らしい。
誇らしくて、嬉しくてたまらない。
最後に一つだけ、せっかく勝ち取った感情で胸を張って言おう。
私は柚木 凛を愛していたと。
死から始まる恋もある side AI 湯浅八等星 @yuasa_1224
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます