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フルミ製作委員会

第1話 「始点」

第1話『始点』



中学2年のある日、レモンのひょんなひと言からおれ達はアイドルを目指すことになった。


「みんな!!!!!アイドルやろうよ!!!!」




その日のおれは、母に頼まれたおつかいを済ませ、すでに幼なじみたちが集まっていると思われる青原家に、少し遅れて到着した。

中に入ると、家中に響き渡っていると思われるほど大きな声とともに、レモンはなにやらカラフルなチラシを両手いっぱいに広げていた。


嫌な予感がする・・・。


相変わらずあいつ、桃原恋桃はムードメーカーというかトラブルメーカーというか・・・。


「ど、どうしたのいきなり・・・」


そう発したのは青原月出里。

まさに『爽やかイケメン』と呼ばれるのが似合う優男で、今もレモンの突拍子のない提案にすら微笑を浮かべ、ツッコミを入れたいのを我慢している。おれ達は男同士ということもあり、幼なじみの中でも特に分かり合っている仲だ。


「アイドルだよアイドル!!!!『fruit・mix ♪』だよ!!!歌って踊れるんだよ!!テレビに出れるんだよ!!ユズちゃん!!」


ユズとは月出里の双子の妹、青原柚子だ。


「テレビに出れるの?レモン、早く行くよ!!」


と、このようにレモンの手からチラシを奪い取るせっかちなこのツインテール娘は、それからレモンの手を引いて未だドアの前に突っ立っていたおれの方へ向かって、ぶつかってきた。いてぇ。


「うぁっと、ライム!!何の用?あたしたち今からアイドルになるんだからどいて!」


「どいてって・・・話も途中だし場所もわかってないのにどこにいくつもりだよ」


まぁまぁな勢いでぶつかられたおれは少々ふっとんだが、冷静にツッコミを入れながらもそのままダイニングテーブルに向かい、スダチの正面に腰掛けた。おつかいのついでに買ったお菓子をテーブルに広げていると、それまでソファーの上で体育座りで丸くなっていたハニーもこちらへやってきて、くっつくように椅子を寄せてからおれの隣に座りテーブルのお菓子をつまむ。


「あ、アイドルなんて無理だよぅ・・・おにいちゃんもそう思うよね・・・?」


おれを不安げに見上げるこの小動物のような妹は、黄原羽女采である。ハニーはおれらよりも4つ年下で、とある事情により両親を亡くしてからずっとうちで預かっているため、血は繋がっていない。


「無理じゃないよ!!!女の子は誰だって輝けるんだよ!!ハニーちゃんだってなれるよ!!!ライムだってそう思うよねっ!!」


そしておれ、赤原來夢。

名字に原がつくおれたちは実はみんな親戚で、ずっといっしょに遊んできている幼なじみだ。


ハニーの手を取り目を輝かせて説得するレモンに心を打たれたらしいユズは、こんどこそと扉に手をかけ出ていこうとする。


「そうだよ!!だから早くなりにいこう!!アイドル!!!」


さすがに耐え切れなくなったのか、それまでキープしていたスダチの微笑がほんの少しだけ歪んだ。


「だからユズ、さっきライムに言われたでしょ?まずは開催日と場所をよく確認しなきゃ・・・」


喧嘩が始まるとよくないと思ったのか、レモンが慌ててユズの手にあるチラシをのぞき込む。


「あ、うん、えーっとオーディションは・・・来月の土曜日だよ!!ね!!みんなアイドルやろう!!」


なんだかノリノリな人達だけで話が進んでいる気がするのでたまには口を挟んでみる。


「つったっておれもスダチもまだやるなんて・・・「ライムもやるの!分かった?!」あ、はい。」


無駄だったようだ。


こうしておれたちはいつもレモンやユズに振り回され、


「やるだけやってみるっていうのもいいかもね」


スダチ、


「うぅ・・・わたし、大丈夫かな・・・」


ハニー、


「まあ、きっと大丈夫だよ。みんな一緒だし。」


そしておれは、


おれたちは、


予想できない明日を、今と変わらないこのメンバーで。


「みんな、頑張ろうね!!!」


ずっと笑えるように。

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