女友達は不毛だ
ポン太
久しぶりに集まるとなると。@LINE合戦
私が中高6年間通っていた女子校時代のなかよし四人グループで、会うことになった。劇団で演者として働くM、監督を目指し大学で映画を学ぶA、記者を目指すY、そして私。四人では長い休みのたびに旅行に行ったりしているが、皆多忙なのでスケジュールはなかなか合わない。七月十五日の金曜日、やっと四人の予定が合ったので、どこか出かけようということになった。私は大学で授業が夕方まであったが、ほかの三人は皆一日中空いているということだった。予定二週間前、ラインのグループで当日何をするか話し合う。企画好きな私や普段劇団で酷使され心身ともにストレスまみれのMが、やりたいことをひたすら提案。皆課題や試験、就活に追われていることもあって“パーッとなにかしたいよね”が共通の希望だ。私は最近女子大生の間で流行しているらしい、”バリアン“つまりラブホテルでのお泊り女子会を提案した。ラブホテルの女子をターゲットにした戦略は想像をはるかに超えて徹底されており、天蓋付きのベッド、DHCのアメニティ、パナソニックの美容家電、シャンパンタワーなど、女子にとってまさに夢の世界。それも夕方から翌日昼まで遊べて五千円というのだから驚きだ。お泊りは気の置けない友人とだからこそ成立するものだし、積もり積もった話を夜な夜な繰り広げるところを想像し、わくわくしていた。これにはみんな乗り気で、ディズニーやおいしいディナーなどほかの案も出ていたが、このプランでいくことになった。
しかしここからが問題だった。予定の五日前、私はホテルの予約を取ろうと「十五日、どうする?」とラインで皆に問いかけた。すると、Yから「どうしよっか~、ディズニーにする?」と返信が。……は?(笑)私がした「どうする?」という質問は、「どうする、十五日?店舗とか、部屋タイプとか。」と言う意味合いであり、決して「十五日なにする?」ではない。だってその話題は一回解決しているじゃあないか。もしかしてホテルに決定だと思っていたのは私だけなのか。私がホテル女子会に勝手に舞い上がって空気を読めていなかったのか。驚きの中悶々としていると返信が来た。
M「あれ、ホテルじゃなかった?」
Y「あー、そうだったね、そういえばバリアンとか言ってたね」
M「でもディズニーも行きたいなあ」
Y「ディズニー行きたいの、わかる。てか、ポン太夕方まで授業ってことは、バリアンきついかな?」
M「私が二三時には帰りたいからね…次の日、朝八時に楽屋入りなの」
Y「ちょっと私よくわかんないけど、私は一日空いてるからなんでもいいよ!てか任せる!」
……てか任せる!
この会話を一言でいうと”カオス”である。そしてこの自由さ、テキトーさ、これがまさしくぬくぬくとした女子校で培養された女子そのものだ。まだそれだけならいい。別にホテルがなくなってディズニーになってもいい。(筆者はディズニーに乗り気ではないが)ただ、一番引っかかるのは「てか、任せる!」……「てか、任せる!」だ。(あまりに衝撃的だったので繰り返した)なぜ人に任せるのか?四人で出かけるのに、当日の企画が面倒くさくなったから誰かに決めてもらおうという魂胆は透けて見える。言いたい意見だけ言って細かい調整は“任せる”。私はこの四人グループで常に“任せられる”立場にあり、その度イライラしてしまう。私の性格もあるのだろうが、数時間ちょっと会うのにもここまで任せられると、精神がすり減る。楽しみではなくなる。
…書きながらいろいろ思い出してしまって、理性を失ってしまった。話の本筋に戻ろう。
結局、バリアンはMの勤務地から遠いことがわかり、別の宿を探した。ちょうど私は学校で課題に追われているところだった。携帯の電池がなくなりそうだったが、四人がラインを見ているのは今しかないと思って急いで探し、いい宿が見つかった。
私「ニューオータニイン東京大崎、一部屋二万だって。チェックインは十四時からだから私が学校の間先に入れるし、チェックアウトは十一時までオッケー。あー、電池がやばいから家帰ったらほかも探してみるね」
すると、ここでAが初めて口を開いた。彼女はこういった予定に関して人に百パーセント任せるのにかかわらず、具体的な金額の話が始まると徹底的に意見を出してくるというツワモノである。過去何度も徹底的に金額にケチをつけ、「それならあんたが考えてよ!」と私やYの逆鱗に触れてきた。
A「二万って一人二万?」
私「一部屋(言ったでしょうが…それに、一人二万のホテルを提示するほど私の金銭感覚狂ってませんけど)」
A「なるほど」
M「一人五千円か~。ディズニーと変わらないね。ありだわ。」「どっか夜通し入れるスパとか、ないの?」
私、反射的に”東京 スパ 24時間”で検索、リンクを送る。あまり大したスパはなさそうだったし、宿泊施設もついていなかった。
私と同じことを考えたのか、結局Mの「お風呂入って泊まれるとこがいいなあ♡もしどこもなかったら、ディズニーにしよ!」という発言で一段落した。どこもなかったらって、探すとこまではやらないんだなあ。と思いながら、いつも通り半ギレしながら宿を私が探す。ここまでくると、なぜこの三人は私が半ギレであることに気づかないのだろうといつも思う。もう、五年の付き合いなのに…。今度も四人で一部屋、温泉付き、Mの劇場から近いという条件で検索をかけ、いくつか目星をつけた。和室で露天風呂がつき一人六千円ほど。なかなかよさそうだったが、ドケチのAやディズニーに行きたそうなYが納得するとは思えなかった。
私「いくつかあったけど、微妙だったよ~。ディズニーにしますか?」
M、Yからソッコーで返信があった。二人ともウキウキしたかわいいスタンプを送ってきた。
そもそも私がここまでディズニーに乗り気でないのには5つ理由があった。(五つも!)①日々の生活で十二分に疲れているのに、ディズニーなんか行ったらもっと疲れる ②五時まで学校だから、六時の入園に間に合うかわからない ③入園料がバカ高い上に、夕飯をろくに食べられない ④せっかく久しぶりに集まるのに、ゆっくり話せない ⑤遠すぎて帰りがめんどくさい。交通費に千円もかけたくない。
なぜ皆行きたがるのか訳が分からない。とくにドケチのA、ディズニーなんて最も割に合わない出費じゃない!
まあそんなことは置いておこう。ランドかシーかの話が始まった。もう私は戦力喪失、あきらめモードで、好きにしてくださいというスタンスだ。
A「意見言っていいなら、シー最近行ったからランドがいいなあ」
Y「私どっちでもいい。でもシーだと舞浜から時間かかるから、ポン太が来れるのまたちょっと遅くなるよね。ランドのほうがまだたくさん遊べるかもね」
私「じゃあシーね。了解」
この人たちって本当に人任せだなあ。すごいなあ。どうして自分も出かけるのに議論に参加しようとしないのだろう。面白い人だよなあ。
M「どちらにせよ、五時四十五分くらいに舞浜集合だね!」
はー。やっと決まった。よかった。
M「”つまみ”で日本一周!新宿に四十七都道府県の逸品が集合!LINE NEWS http://news.line.me/list.....」「これやばい!」
Y「つまみはやばい!やばーい!」
A「やばい、それおいしそう!いきた~~い!!!」
……女友達は、不毛だ
女友達は不毛だ ポン太 @pontagatourimasu4
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ありもと部屋最新/ありもと優
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
のんび~り散策ライフ/蓮条
★27 エッセイ・ノンフィクション 連載中 30話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます