6th try:Like a Shootingstar
俺の身体に宿る、人ならざるチカラ。
女神の加護。
強化された脚力。その本質と、使い方。
耳元の風切り音を聞き、重力の感覚を失いながら、俺はそいつをようやく自覚する。
この脚力は走るためのものじゃない。
跳ぶためにあったんだ。
「……ってか、いつになったら止まるんだよ、これッ!」
なんか地平線が丸くなってきたし、さっき雲を突き抜けたぞ!?
《にゃっはっはっは、全力で飛びすぎだにゃあ》
女神が頭の中で笑う。
《安心しろにゃ、大気圏外にまではいかないからにゃ》
いやそれ安心するところなのか?
だが、急激に高度が上昇したにも関わらず、息苦しさや寒さなどは感じなかった。これも女神の加護のひとつか? いきなり凍死とか嫌だからな。
さっきまで立っていた地上ははるかに霞み、もはやどこだったかも定かじゃない。見えるのは一面の草原のみ――。
女神がささやく。
《さて……次にどうすればいいか、もうわかってるにゃ?》
声に出すかわりに、俺はうなずいた。
感覚的に理解していた。ステータス上には表示されているのに、これまでの二十三回、どれだけ使おうとしても使えなかった、そのスキルの発動方法を。
『呪いによって、前後にしか進めない』
そんなふうに思い込んでいたから、こいつの発動条件に気付けなかったのだ。
《だから頭が固すぎなんだにゃあ、シュウちゃんは》
うるせえな。わかってるよ。
いまその感覚は、まるで自転車の乗り方や言葉の話し方のように、当たり前のものとして感じられた。
右足に力を込め、意識を集中する。
前進から黄金の粒子が立ち上り、右足へとまとわりついて輝きを増していく。
足先に顕現した小型の太陽。それを今しがた飛んできた地上へと向ける。
不思議な感覚だ。目には見えずとも、どこにそれを放つべきなのか、はっきりとわかる。
そして、俺は口にした。
女神の加護を受けた勇者のみが奮うことのできる、その
「
次の瞬間、目の前で光が炸裂し、ついで強烈な加速が俺の体を下へと――
※※※
「……いや、うん。まぁ、確かに俺も悪かったと思うよ。スライム一匹に明らかにやりすぎだよな。フラストレーションは溜まってたけど、さすがにこれはないって自分でも思う。でも、わかってほしい。俺だって知らなかったんだ。なんせこのスキル使ったのはこれが初めてでさ……」
《だれに言い訳してるのにゃ?》
「……いや、なんとなく」
巨大なクレーターの底で、俺は途方に暮れていた。
突き刺さった足を引き抜いたその下に、標的のスライムがいたのかどうかはもう、わからない。直撃していようがしていまいが、おそらく影も形も残ってはいないだろう。この衝撃では。
爆心地から、俺は周囲を見回す。四方数キロにわたり、地面はすり鉢状に抉られていて……。背後にあったはずのアルメキアの門は、きれいさっぱり消え去っていた。門だけではなく、城も、街も、市場も、すべて。
《初勝利おめでとうだにゃ! いまの一撃でスライムとカビナ平原と城都アルメキアがまとめて消滅したにゃ。大幅レベルアップにゃ!》
「後味が悪すぎるわボケェ!」
確かに俺は呪いの隙をついて逃げ出そうとするロクデナシ勇者だが、かといって大量殺人犯になるつもりだってこれっぽっちもないッ!
「元に戻せ!」
《えー、でもこれだけレベルアップしたのにもったいないにゃ?》
「サイコパスかてめえ! こんなんで強くなっても寝覚めが悪いだろうが!」
俺はただちにクレーターから飛び出し、走り続けて、ようやくまだ形が残っている死にかけのモンスターを見つけてタックルをぶちかます。
てれっ
てれっててれーててれっててー
Stage 1-1 幻想城都アルメキア
┏( ^o^)┛×∞
==================================
【
女神の加護を受けしものが使用できる大いなる力のひとつ。
星々の魔力を右足に集めて放たれる蹴り。
空中でのみ発動でき、またその際の高度によって威力が変動する。
最高度で放たれる一撃はまさに彗星。
その威力は天を裂き、地を割り、あらゆるものを粉砕し焼き付くすという。
使用可能レベル:1
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます