閉幕:現実の虹

「今日も疲れたな・・・」


出張先の街。歩き慣れない道を進む中、少し古びれた長椅子が目に留まる。疲れた足が意思を持つかのように、その椅子まで誘導され拝借する。その場所はちょうど木陰になっており、思っていた以上に涼しく、心地よかった・・・そのまま目を閉じる・・・遠くから学校のチャイムの音が耳に届いてきた・・・。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


・・・どのくらいの時が経過したのだろう・・・・・。再び目を開けると、そこには先ほどと然程変わらない風景・・・ただ、さっきと違うのは隣(と言っても、少し離れている)に、一人の少女が座っていた。紺色と白のセーラー服姿で、髪は椅子に届くくらい長い・・・。中学生か、高校生くらいだろうか。その少女は、本を読んでいるのに夢中なのか、こちらには気付いていない様子で・・・と、その時---


??「七夏! お待たせ! 何読んでんの?」

七夏「あっ、小説です☆」

??「それは分かってるんだけどさ」

七夏「えっと、翠碧色の虹・・・です☆」

??「すいへきいろのにじ!?」

七夏「はい☆ 『虹は、どんな色に見えますか!?』っていうお話しで・・・」

??「虹の色!? 七色じゃないの!?」

七夏「そうですけど、この小説に出てくる女の子は、そうじゃないみたいで・・・」


そのような会話が私の耳を通過してゆく・・・。私は、その会話の元へと視線を送ってしまっていた・・・「ななつ」と呼ばれていた少女が、こちらの視線に気付き、私と目が合う。その瞳は、綺麗な翠碧色だった。私は軽く会釈をすると、少女も軽く会釈を返してくれた。


??「??? 七夏!? 知り合い!?」

七夏「いえ・・・」

??「ふーん・・・まっ、いいや! 早く帰ろっ!」

七夏「はい☆」


そんな会話を残しつつ、少女達は椅子を後にした・・・。

再び静寂な時間が訪れ、木々の揺れる音が耳に届くようになる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


駅前へ向かう道中、1軒の書店が目に留まる。次の列車の出発時刻までは、まだ余裕があったので、時間潰しに寄ってみる。たくさん並ぶ本が視界を流れてゆく中、何かが光った。立ち止まり、それを追い戻すと、その光は・・・小説の扉絵に描かれている少女の瞳だった。小説のタイトルは「翠碧色の虹」。先ほど「ななつ」と呼ばれていた少女が読んでいた小説だろうか。あの時は、ブックカバーがされていたため、分からなかったが、扉絵に描かれている少女は、「ななつ」と呼ばれていた少女と再会したかのようによく似ていた。ただ、明らかに違うのは瞳の色だ。この本の扉絵の少女の瞳は、見る角度によって色が変わる「ホログラム印刷技術」が使われているようだ。そのホログラムの光があったから、こうして私はこの本を手にしている・・・。そのまま、なんとなく、小説の中を覗いて見る・・・。




「翠碧色の虹」


序幕:不思議な虹を追いかけて


写真撮影・・・今は、多くの人がその気になれば---




翠碧色の虹 完

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翠碧色の虹 T.MONDEN @T_MONDEN

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