背骨と、人魚の涙。

脳髄の独り言

脳髄は独りで話す

誰かが聞いていようが

聞いてあるまいが

気にせず独りで話す

独り言は完成されている

だが未完成とも言える

誰も「完全なる完成」を見たことないから

誰も終わりだと言えない

言葉は声に出さなくても出る

心の中でも頭の中でも

手を使って音を出さないで話すことも


脳髄の独り言は悲しみに耽る

誰も聞いていないことに悲しんではいない

ただただ悲しみに耽るだけである

ただただ感情に身に任せる

脳髄は音を発しない

脳髄からは音楽しか流せない

未完成の歌詞から作られた芸術が

誰も知らない言葉を歌い

誰も知らない楽器を奏でる


嗚呼、脳髄よ何故踊る

何故独りで奏でる音で踊る

独りで寂しく踊る脳髄よ

胎児とともに踊れ叫べ

怒り身に任せるように

感情は偉大なり

脳髄よりも偉大なり

悲しみよりも偉大なり

怒りよりも偉大なり

嬉しさよりも偉大なり

愛おしさよりも偉大なり


脳髄は独り言を

君はこれを読み不愉快に

私は悲しみに耽るだけ




『ドグラ・マグラ』を読み始めた、ある日のこと。

結局読み終わることなく、半分まで読んで諦めてしまった。

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