第12話 旅は終わらない
カバン達が案内されたのは、いくつかイスが並んでいる部屋だった。
緑帯のラッキービーストが何やら操作を始めると、部屋の照明が暗くなった。スクリーンが出てきて、そこだけ明るくなった。
「コレカラ エイゾウ シリョウ ヲ ミセル ヨ。イチオウ ボク モ ホソク ヲ スル ツモリダヨ」
緑帯のラッキービーストが付け加えると映像が流れ始めた。
映し出された映像の内容はジャパリパーク創設の経緯からヒトがいなくなるまで、数々の出来事を簡潔にまとめたものだった。ただ、難解な内容も多く、後半にさしかかる頃にはちゃんと起きて見ているのはカバンとオランウータンだけだった。ただ、フェネックもかろうじて起きているようだった。
「あれー?終わっちゃった?」
「あー!アライさんも途中で寝てしまったのだー!フェネック、なんで起こしてくれないのだ!」
「アライさん、起こしたけど起きなかったのさ。それに、このえいぞうしりょう?見てても難しくてよくわからなかったよ」
そんな中、カバンちゃんはひどくショックを受けている様子だった。
「カバンちゃん、だいじょうぶ?」
サーバルが心配そうに声をかけた。
「ラッキーさん、やっぱりヒトは…」
カバンは少しうつむき加減で訊いた。
「シリョウ カラ ヨソウ サレル ニハ、 ヒト ハ オソラク ゼツメツ シタ カ コタイスウ ガ スクナクナッテ イル ト カンガエラレルヨ」
「資料の中で、ヒトはかんせんしょうで大変なことになったと言っていたわ」
オランウータンが付け加えるように言った。
「ラッキーさん、ほんとにヒトはいなくなったのでしょうか?」
カバンはもう一度訊ねた。
「ボク ノ カンカツ スル ハンイ デハ イナイ ト カンガエラレルヨ。ダケド ドコカニ イル カノウセイ ヲ ヒテイ ハ デキナイヨ」
「どこかにいるかもしれないのかしら…」
カバンちゃんはしばらく俯いて何か考えている様子だった。それから、顔を上げて、
「サーバルちゃん、それでもボクはヒトを探す旅を続けようと思う。少しでも可能性があるなら」
と決心したように言った。
「かばんちゃん…、それなら、わたしついて行くよ」
「アライさんも、カバンさんのためならどこまでもなのだ!」
「カバンさんのためなら、もちろんだよ」
サーバルもアライグマもフェネックも迷うことなくカバンの声に応えた。
翌日、カバン達は最初に訪れた港に再び来ていた。
「あなた達、これからどうするの?」
ついて来ていたオランウータンが訊いた。
「とりあえず、ボク達が乗ってきたバスをもとに戻して、このちほーを見てまわろうかと思います」
カバンが答えた。
「もしヒトを見つけられなくても、あなたがヒトの遺してきたものを知るだけでも、その旅は大いに意味のあるものになると思うわ。私はこの街の図書館にいるから、また寄ってちょうだい。その時は旅の話を聴かせてね」
「はい」
カバン達の旅の歩みは続くのであった。
けものフレンズ ~After Day~ 八重垣みのる @Yaegaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます