中世の世界で使われる剣はもう時代遅れ!

犬の散歩

プロローグ

――時刻は昼頃。

いつものように剣の作製をするために、鉄を打ち付ける。

鍛冶屋独特の鉄の匂いが広がっており熱気が蒸し返している。

頭にタオルを巻き付けてアメをなめながら、かれこれ5時間近く淡々と作業をしていた。


 「ふぅ。一旦こんなものにしておくか。師匠、昼飯買ってきます。」


そう言ってあくびをしながらタオルを巻き取る少年。

髪の毛はボサボサとしており、目にはクマが出来ていた。

「おう、気をつけろよ。今日は確か騎士団の主力部隊が戦争から帰還する日だ。

通行止めになっているかもしれん。あと、俺の分も買ってきてくれ。」


と一言告げる大柄な男は少年の師匠である。少年と同様に頭にタオルを巻き付けアメを銜えていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


少年の前は『リルフ・ヒルレス』。

細身で小柄、おまけに眼鏡かけということもあり鍛冶職人とは縁のなさそうな容姿をしている。

しかし、7歳から鍛冶屋で働いており現在17歳ながらも

数々の名刀を生み出しており期待の新人と業界で話題になっていた。


 彼は騎士団に大きな憧れを抱いていて、いつか自分の作った刀で自身も

騎士団に入団するという夢があった。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


リルフが買い出しを終えたころだった。


騎士団の帰還を合図する街の中央の大鐘が町中に鳴り響く。

しかし、騎士団の帰還を待ちわびる住民はほとんどいなかった。

帰還を迎えるのは騎士団の親族・友人のみ。


――何だこれ……


リルフは絶句してその場に立ち尽くした。

 

街の大通りを竜車に乗って帰還する騎士の姿は、包帯で体を覆ったものや骨折をしている者ばかりだった。

 1000人以上の中で死亡者3割程。重軽傷者が7割。

無傷で帰還したものは一割にあたる100人も満たなかった。


初めて騎士団間近で見たリルフは、

騎士団に絶対的な信頼と期待を抱いていたが、

そんな気持ちも一瞬にして打ち砕かれたのだ。


――武器だ……もっと強力で斬新な武器が必要なんだ。


そう強くこぶしを握りながら鍛冶屋に走り戻る。


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