【三題噺】山賊と暮らした話【アエテルタニス】

Seth

よゥ坊主。目ェ醒ましたか。

 よゥ坊主。目ェ醒ましたか。


 誰だアンタって顔してんな? 俺はスヴェンってんだ。皆からは棟梁って呼ばれてる。


 ガイコクジン? 何だそれ。


 まァいいさ、とりあえずこのパンでも食えよ。何で荒野で1人ぶっ倒れてたか知らんが、食うもん食わねぇと元気になれんぜ。


 ああ、そうだよ。坊主はこの近くで、その妙な服着て寝転がってたんだよ。


 ニホン? いや知らんな。お前、どっかから魔法か何かで飛んできたのか?


 まぁいいさ、腹は膨れたろ。んならちっと手伝えや。




 そら、こいつらがウチの根城にある武器だ。こいつを手入れするのを手伝ってくれや。


 何? 包丁しか研いだことがない?


 ちっ、柔い手だとは思ったが。しゃーねぇ、おいダニス、教えてやれ。


 まぁそうしかめっ面すんなよ。働かざるもの何とやらっつーだろ?


 つっても俺らは山賊だがよ! ハハハ!




 ん、もう終わったのか。意外と早かったな。


 この武器何に使うのかって?


 ここは魔物の領域アエニグマに近い所にあるからよ、ちょこちょこと頭の悪ィ魔物がやってきたりするんだがよ。


 この前、どうも少し手勢を抱えた魔族に見つかっちまったらしくてな。


 攻めてこられたらヤバいんで準備してんだよ。


 逃げないのかって?


 そりゃ考えたが、なんだかんだ俺らはここを気に入ってんだ。荷物も多いし、他の根城探すよか、待ち構えた方が毛1本マシってもんよ。


 官憲サマに見つかっても面倒だしな。


 さて、坊主は巻き込まれただけだ。手伝ってくれてありがとよ。飯でも食って寝な。




−−おい。


 おい!


 起きろ、坊主! 火事だ!


 こいつは事故じゃねぇ、誰かが火を放ったんだ!


−−何!? 魔族が来た!?


 畜生、なんて偶然だ! だが連中が火計だとか考えるか!? それに火の回りが早い、連中にそんな頭はねぇ!


−−待て、お前ら何コソコソしてやがる!


 って、テメェは確か−−


 ぐあっ!!?


 官憲め、まさか魔族を利用して俺らを滅ぼそうってのか……!


 何が悪は滅べ、だ……! 魔族は俺らの敵だろうが! そいつと手を組んでまで滅ぼしたいのかよ、俺らをよ……!


 覚えてやがれ、クソ野郎共め……末代まで祟ってやるからよォ!!


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「……そこで、火のついた梁が降って来たところで、目が醒めたんだ。」

「ふーん、よく分からない夢ね。」


 病院のベッドの上で、僕は見舞いに来た姉にさっきまでの話をした。


「魔族? ってのに囲まれてるところで、わざわざ山賊なんかやってるのねぇ。変な人達。」

「詳しくは聞いてないけど、なんでも色々あって街にいられなくなったらしいよ。その人達をどうにかまとめて生活してたんだってさ。」


 山賊達の中には、翼が生えていたり、目が3つあったりする人もいた。

 なんでも魔族の血が混じっていて、そのせいで追い出されたんだとか。


 追い詰められた環境でも、いや、だからこそかも知れない。

 人と人が、手と手を取り合って生きていける訳ではないのだろう。

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