第3話 エルキニス大戦

 調査の結果は同盟国の一国、ヘレス王国の裏切りで現在約数百の軍勢がこちらに向かって進軍しているとの事。

 元々、ほぼ無名だったエルキニス王国が三大王国とまで言われていたのか。それは他の王国同様に戦争をし領土を拡大していったが、他の国と違い領土を奪うのではなく同盟とし契約を交わしエルキニスの領土とし拡大していった。

 定期的に国王同士で集まり現状の報告などをしていたって話もある。

 報告を聞いた王は怒りに震えたがすぐさま他国の王に救援の兵士の派遣要請に数人の兵を向かわせ、待機していた兵士には出撃の命令を下した。

 騎士団も戦場に向かいたいことを伝えたかったが、王からの命令には背くことは出来ない。歯がゆい気持ちを抑え万が一の為にエルネを逃がす準備をしていた。


 しかし、物事はうまくはいかないものだ。

 同盟の王国に救援を求め送った兵士の内数名が慌てた様子で王の元に戻ってきた、どうしたと王の問いに兵士はこう告げた。

 他の同盟国も裏切りこちらに向け兵士を進軍させていると。

 王は他国の裏切りは予想していた、だからこそ裏切らないと確信をしていた国に救援を求めた。だがその信用は裏切りと言う形で破り捨てられた。

 王は玉座に力無く崩れるように座り天を仰いだ。

 そんな姿の王を前に兵士は皆、王からの命令を待ったが答えは出ているも同然だった。

 一国に対し四方八方からの進軍、敵の兵士は数千になるだろう。そんな状況はどうあがいても絶望でしかなかった。


「そこで、私がこう言ったの。私は平気だから騎士団を使いなさいってね。」

「意外と強気に言ったな。」

「だって、その時の私は上級魔法は殆ど使えたからね。」

「そうだったのか。」

「それに……」

「どうした?」

「いえ、話の続きをしましょ。」


 何か気になる感じで言葉を詰まらせたが本人が言いたくないのか続きを話し始めた。




 王はエルネの一言を聞き決意をきめ騎士団に進軍の命令を下した。騎士団はすぐに二手に分かれ別々の方向へ進軍の準備をした。

 エルネは王城で待つようにと言われたようだ。当然と言えば当然だろうがエルネは不満だった様だ。

 準備の出来た騎士団はエルネに笑顔で手を振り戦場へと向かった。

 騎士団が戦場に来たことで兵士の士気は向上し反乱軍は徐々に後退し戦況は優勢へと変わっていった。

 このままいけば勝利で終わる、誰もがそう思っていたがそれは間違いだったと思い知らされる。


 何故同盟国がいきなり裏切ってまで戦いを挑んできたのか、たとえ他の国も同様に裏切ったとしても他国には無い技術、魔法がある国に挑むなど無謀にもほどがある。

 理由は至極簡単なものだ、同盟国以外の国の後ろ盾が有ったからだ。

 その国の名はグロウス、三大王国の一国である王国。

 戦争を仕向けた理由は自国には無い魔法と言う技術を我が物にしたく仕掛けたのだった。

 エルキニスの同盟国は最初裏切りの話を持ちかけられた時は首を横に振った、だがグロウスから出た提案で大半の国は寝返ることを承諾した。


 提案内容は

 一、この戦争に勝利した際に自国は一切貴国に対し戦争を仕掛けない事を誓う。

 一、貴国を独立国と認め、貴国が他国に戦争を挑まれた際は自国は全力で貴国を防衛する事を誓う。

 一、自国がこれから得るであろう技術、魔法を貴国にも習得する権利が有ると認め、技術提供をすることを誓う。


 前二つも国からしたら嬉しい提案だが、三つ目の提案が裏切るには十分の内容だ。

 結果、エルキニスは四方八方からの猛攻を受け王都まで敵の侵入を許してしまった。

 再度、王エルキニス一世は頭を抱えた。王都最強の騎士団は別々の戦場へと行ってしまってる。

 勝利が見えた戦況が再度一変し、敗北が濃厚になった。


「そこで、私の登場よ。」


 エルネは嬉しそうに立ち上がり偉そうに仁王立ちした。


「まさかとは思うが……」

「そのまさかよ。私が迫り来る敵を得意の魔法で蹴散らしたの。」


 王の姿に見かねてエルネは単独で王城に迫り来る敵の前に行き、魔法で交戦したみたいだ。

 なんてアグレッシブ……


「だが、いくら上級魔法を使えたとしても一人で大人数相手に出来たのか?」

「……上級魔法だけでは私でなくても無理よ。ましてや、対人戦なんてやったことの無い少女はなおさらね。」

「なら、どうやって。」

「超上級魔法。」

「え?」

「超上級魔法よ。私が一人で王都を守れた要因でもあり、封印されている理由よ。」


 聞いたことの無い単語が飛び出してきたことに何がなんだか分からなくなった。


「知らなくて当然よ。当時ですら解読されていなかった魔法だもん。」


 更に訳が分からなくなってきた。何故、解読もされていない魔法がこんな少女に使えるのか。


「困惑しているようだけど簡単な事よ、私が解読したってだけ。でも、安定して使えるかわからなかったから黙ってたの。」

「なるほど。でも、何故そんな危険な魔法を使おうと思ったんだ?」

「なんでって、みんなの帰る場所が無くなるのをただ黙って見てられる訳ないじゃない。」


 そうだよな、当たり前のことを聞いた事に対し素直に頭を下げた。


「ただ、そこからだったわね。私が徐々に壊れていくのを感じたのは……」


 そこからのエルネは悔しそうに、でも悲しそうに話を続けた。

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放浪の騎士と漆黒の少女 ユウやん @yuuyann

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