第2話 過去と現在

「落ち着いた?」

「う、うん……グスン…」


 あれから暫くエルネは泣き続けたがどうやら落ち着いたようだ。


「落ち着いた所で悪いが、お前の事、お前が知っている事を教えて欲しい。」

「うん、わかった。」


 そうしてエルネは想い出を絞り出すかの様にポツリポツリと話し始めた。

 まとめるとこんな感じだ。




 産まれて2年後、エルネが2歳の時に彼女に魔法の才能がある事が分かり、その歳から魔術の勉強をし始めた。

 そして4年後、6歳に成ったエルネの魔力は中級魔術師並かそれ以上になっており、当時の国王エルキニス一世は彼女を魔術師学校の上級クラスに編入させる事をエネルの両親に告げ、承諾を得て学校へと行かせた。

 だが、学校での生活は最初はあまり歓迎されなかったようだった。

 何故なら、周りの学生は12歳を超えている者ばかり、そこにまだ6歳の彼女が編入で入ってきたとなれば周りの学生は面白くない。

 更に、国王の命令で入学したと聞かされれば王に使える為に頑張って魔法の勉強をしてきた者達はもっと面白くなくイジメをする者も現れたらしい。

 だが、半年我慢し貪欲に魔法の勉強に取り組む彼女の姿を見て自分のやっている事が恥ずかしく成ったのだろう、イジメていた学生は彼女に謝罪し良き友となった。

 そんなこんなで学校での生活も四年が経ち学校を卒業したエルネは10歳という若さで王城での仕事をする様になった。

 そこで初めてエルキニス王国の最強の魔法騎士団と出会う。

 騎士団のメンバーは皆彼女を歓迎し暖かく迎え入れてくれ、分からないことは優しい教えてくれたそうだ。


「で、当時騎士団のメンバーは団長のアーザラーをはじめ、副団長のエレナ、クローリアにメレン、オルシア、ケールト、バージアス、ガルツ、アルシア、べメルの十人で中でもケールトは団員の中でも年が若く一番仲が良かったわ。」


 楽しそうにメンバーの名前を言い昔の思い出をあれやこれやと話しているエルネだが俺はストップをかけた。


「ちょっと待ってくれ。今、メンバーの中にバージアスの名前が有ったのだが気のせいだろうか。」

「ん?気のせいじゃないよ。」

「俺の勘違いなら良いのだが、バージアスっておちゃらけた感じで普段はヘラヘラしているが剣術では誰も勝てない程強く、片目を眼帯で隠している。」

「そう!そのバージアスよ!」


 まじか……

 バージアス。

 俺が放浪騎士になる前、正確には騎士だった頃に剣術を教えてくれた師匠であり、今放浪の旅をしている原因の人物。

 この放浪の目的は師匠を探す為の旅なのだ。

 俺の前から姿を消す前にこの剣を渡したのと最後に言った一言の意味を聞くために。

 だが、そうなると師匠はいったい何歳なんだ?

 少なくとも人間が生きれる年齢では無いはずだが。


「で、どうして貴方がバージアスを知っているの?」

「それは、あの人が俺の師匠であり、恩人でもあるからだ。」

「ふーん。まぁ、バージアスなら生きていてもおかしくないとは思っていたけど、やっぱり生きていたんだ。」

「どういうことだ?」

「彼は初めて魔法で半不老の能力を作った人物だもん。魔術師は皆、尊敬と憧れの目で彼を見ていたのを覚えているわ。」


 ……自分の師匠は剣術がすごい人物だとばかり思っていたから驚いた。

 バージアスは一切魔法の類を使う事はなかった。

 どんな危険な状況でも己の剣術のみで切り抜けてきた。

 それは俺と共に騎士として戦場に出ても変わらずだった。

 そんなバージアスが魔法が使えて、なおかつ半不老の魔法を使っていたとは、やはり師匠は剣術でもそうだが化け物だ。

 そうなると、師匠が配属されていた魔法騎士団のメンバーの団長はいったいどんな化け物なんだよ。


「少し逸れたわね、話を戻すわ。」


 そう言い、エルネは続きを話し始めた。




 話は戻り、王都での生活はすごく楽しかったようだ。

 魔法騎士団のメンバーは仲間のように接し、楽しい事は常に共有しあうほどにまで仲良くなり、王城で働いている人たちも自分の娘のように接し可愛がってくれたようだ。

 エルネの仕事は主に書類の整理や魔法の鍛錬、騎士団や兵士と共に王国の外へと行き薬草の採取だったようだ。

 そんな生活が数ヶ月続いたある日、王の耳にとある情報が舞い込んだ。

 隣国がこの王国を目指し進軍していると……

 王はすぐさま情報収集のため少数で編成した部隊を派遣し真偽の調査をし、他の兵士にも迎撃準備を王は命じ迎え撃つ準備をおこなった。

 騎士団にも準備はして置くようにと王は命じたが、戦いに出る準備ではなくエルネを守る準備をするようにとの命だった。

 王はここ数ヶ月の騎士団とエルネの交友を微笑ましく見ていたようで、いざとなったら騎士団に彼女を連れ逃げるように命令するつもりだったようだ。

 そして数日後、派遣した部隊が持ち帰った情報は誰もが予想していた答えだった……

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