第参区 新人地獄員 獄道振分 案内所
夢楼
一人目の新入地獄員
あー、また落ちてきたよ。
「ようこそ、地獄へ。名前と罪を述べてくださいー。」
上空から勢いよく振ってきた、本日6人目の新入地獄員は男性だった。
地獄に落ちてくる人は、罪を犯した時の姿で落ちてくる。見る限りこの男性は20代だろうか。右手には少年ジャ●プを持っている。
「う゛ぁああぁあぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙いだいよいだいよいだいよいだいよ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」
いくら死んでいても、上空から石の上に落とされた痛さは尋常じゃない。落ちたことないから知らんけど。
大抵の新入地獄員はここで確実に騒ぎ騒ぎ騒ぎ騒ぐ。
あ、新入地獄員って、わかる?
現世の人は聞きなれない言葉かもしれないけど、まぁ新入社員と同じ感じに思ってもらっていいよ。
それと、これを告げるとまた大抵の人は黙り黙り黙り黙る。
「おいてめぇさっきからわーわー騒いでんじゃねぇよ、259年間火炙り地獄に落とすぞいいのか。さっさと名前と罪を述べろ、現世の社会ルールにも従えない下等な劣化動物が。」
ほぉら、すぐに おくちがキュッてなった。
「海堂シュウジです……窃盗罪です……。」
蚊の鳴くような声で喋る。
よく聞こえん。
「は?よく聞こえんな。火炙り地ご」
「海堂シュウジです!!!!!窃盗ざゲボゲフォォオっ!!!!!おえぇえっ!!!!!」
あーわかる、背中強く打つと吐き気するよねー。あ、そこで吐かないでね汚れるから。
「窃盗罪だぁ?くだんねーな。地獄番号六番 海堂シュウジ 火炙り地獄清掃員。」
窃盗罪は地獄の中では割と軽い方なのである。もっとエグい罪がもさぁっとあるために罪が軽く見える。
ちなみに、判断は私、第参区新入地獄員獄道振分案内所管理人 千百合(せんゆり)の独断と偏見で行っている。
よくわからない罪や個人的に好まない人、あとなんか気分でかなりを多くを『火炙り地獄』に落としている。
私からの判断には抗えず、地獄案内人3人ほどにかかえられて各所へ送られるのだ。
「ちょっとこまるよ千百合ちゃんぅ……。火炙り地獄に送りすぎぅ!火炙り地獄清掃員も、火炙り地獄担当員も、みんないそがしったらありゃしないぅ!」
突然後ろの扉から顔を出したのは変な喋り方の閻魔大王。閻魔大王って、よくわかるでしょ。地獄のトップ。
舌を抜くってよく聞くけど、抜かないから。舌抜いてゴミになるより、力尽きるまで使ったほうが地獄運営費削減に繋がるでしょう?
「閻魔大王、今のゴミは火炙り地獄清掃員に回したので大丈夫かと思われますが。」
「もう、新入地獄員をゴミ呼ばわりするのになれちゃったボクが怖いくらいだぅ……めぅっ!!!」
なにかほざいて……じゃなくて、喋っていた気がするけど、私の腕が勝手に重い扉を勢いよく閉めていた。
前方を見ると先ほどのゴミがいない。おそらく案内人が持っていったのだろう。
ちなみに扉の横から黒い毛がモハモハでていた。
あ、絶対これ閻魔大王の髭やんけ。
そういえばさっきから扉の向こうから『いたいぅ!開けてぅ!ひげが挟まってるよぅ!』とかなんとか聞こえる。
「あっ」
キーンコーンカーンコーン。
お昼を告げる鐘がなった。
「さぁて、今日は給料前だし日替わり定食とでもするか。」
私は千百合。第参区新入地獄員振分案内所管理人。
堂々と胸を張り、後輩の挨拶にお淑やかに返事をし見回りも兼ねて日替わり定食へと向かうのだ。
第参区 新人地獄員 獄道振分 案内所 夢楼 @merow0615
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。第参区 新人地獄員 獄道振分 案内所の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます