13
翌朝、
消防に通報され、消防のはしご車で無事救助された。
落下し、安全帯で宙吊りになった衝撃で矢吹蒼甫は
炭鉱夫にシャベルで殴られたわけではなかった。
矢吹蒼甫は、大した怪我ではなかったが、搬送された病院で、経過も観察つつ、二三日入院することとなった。軽い労災保険金詐欺。しかし、それに値する恐怖は味わっていた。
入院最後の日、社長の
「災難やったな」
建宮が言った。
「はい、」
「一晩中宙吊りで怖かったか?」
「あんまり覚えてないんです」
「そうか」
建宮はそう言うと、りんごの皮を向いてやった。
「あ、それぐらい、出来ますから」
矢吹は答えた。
社長の平口も口を開いた。
「矢吹くんをな、正式な社員にしようと思うとると」
「はぁ」
閉まらない返事を矢吹は返した。
「営業の
「はぁ、」
「すまんけど、労災の分は、古賀さんとこが出すらしい」
「これ、美味そうなりんごやで」
建宮は、そう言うと、一人で皮を向いて一人で食べだした。
矢吹蒼甫は、連絡取ったときにどう切り出すか、妻ゆみと娘
出来れば、誤ってでも、二人と三人でやり直したいと思っていた。
<了>
ゴースト・コースター 美作為朝 @qww
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