心拍数その2 ~ 否定と拒絶のかたまり ~
よぉ、久しぶりだな
どうしたんだよいきなり呼び出してさ
え?まずは飯でも食おうって?
何だよぉもったいぶってねぇーで、さっさと話せって
久しぶりに友人に会えたこともあってか、僕はいつもより少し浮足立っていた。
だからというわけでもないが、よそよそしい態度にも気づかずいろんな思い出話をしはじめる。
そういえばさぁ、他のヤツラにも連絡取ったんだけどなかなか忙しいらしくてさ
まったく友達がいのない連中だよなぁ
あっそういや覚えてるか?
……っと……、どこだったっけなぁ? あんときお前と一緒に屋上で見た夕焼け!
野郎が二人でなにしてんだって話だけど、今となっちゃ何か懐かしい思い出だよな
まぁそんなこたぁ、いまはもうどぉでもいっか
あっそうそう、聞いたぞ?
おめでとぅ結婚したんだって? ずっと連絡もしないで、久しぶりに噂を聞いたと思ったらお前、結婚してたんだもんなぁ
ったくホントお前ってやつは水くせぇーなぁ…………、
…………って、おい、ど、どうしたんだよ……?
さっきからなんかオレばっかしゃべってんだけど…………?
懐かしさが先走り、僕は友人の様子がおかしいことにいまになって気付き始めた。
表情がなく、うつろな目をしていて、さっきから視線がまったくうごいていない。
……おい、大丈夫か!? おいってば!!
おい……お……い、…………って、なんだありゃ!?
突然、目の端にざわつくような奇妙なかたまりがではじめる。
はじめは壁についた黒いシミか何かと思っていた物体が、よくよく近くでみると目の前で浮かんでいるのが分かる。
それが数秒もたつと徐々にじんわりとどす黒いウジ虫のようにうじゃうじゃと沸いて大きくなってゆく。
お……いおい……な、なんか、やばいぞッッ!? おいっ聞いてるのかッッこの店から出たほうがいい
おいっそこから離れろっっ
……………………っっ
グジャッッッ ごきゅごきゅ ムシャムシャ
いきなり丸い球体のようなカタマリで現れた奇怪な生物のようなそいつは、
目の前の友人の頭部を一瞬でもぎ取るかのようにムシャムシャと齧り取っていく。
地面に血が飛び散り、僕の顔面あたりにも搾りたての精液のような生温かい感覚がひろがっていった。
なんだよっこれ……、 な、なんなんだよぉぉぉぉっっ
意味もわからず僕はテーブルの下へと這いつくばっていた、気色悪い汗のように体中から恐怖がわきだしてくる。
ざわざわと騒ぎ立てる僕のもとへ、店員や他のテーブルでご飯を食べていたお客も何事かと近寄ってくる。
おいっ逃げろよっっ お前らアイツが視えないのかっっ!?
やめろよぉ おいっっやめろやめろやめろっっ やめろぉぉぉぉぉーーーーーーーっっ!!
数十秒、目をつむっていた僕は、
ゆっくりと目を開けて靴でなにかをどかしながら歩き出す…………目の前には、くさいくさい塊がひろがっている。
もはや吐くものもなく、胃液すらも枯れるほどに口のまわりが渇いていたことに気付くのに数日かかった。
「……思ってたよりも、内臓って……温かかったんだなぁ」
なんて退屈でつまらないひとりごとをつぶやきながら、僕はゆっくりと店を一人で出ていった。
…………蟻が這い上がってくる
数千匹の蟻がうじゃうじゃと僕の足を喰べながらよじのぼってくる
血液の袋と肉のかたまりなんて、そんなありがたいものじゃあない、
あの日、現実から一人で逃げた自分は……ただの否定と拒絶のかたまりなんだと思う。
algorithm アダプター篇 マターリしようよ( ・ω・)ノ @robo-taro
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