ぼくと2人

新吉

第1話

 ぼくは犬だ。名前はマル。この家に来てから6年が経つ。もうおじさんね、とミカさんに言われてしまった。まだまだ、と思うけど今年の夏も暑い。少しへばっている。ミカさんは旦那さんのアキオさんと一緒にぼくを選んでくれた。そのとき2人はカップルでそれから今までいろんな2人を見てきた。アキオさんがそろそろ帰ってくる。


ガチャ



「ただいまー」



 ワン!真っ先に会いに行き、ぼくはおかえりと言った。あとをミカさんがパタパタとスリッパでかけてくる。



「おかえりなさい、ご飯すぐ食べる?」


「あー、パッと食べれるやつ。食べてから風呂入るよ」


「はーい」



 そう行ってミカさんはスリッパの音を鳴らしながら台所へ向かう。お風呂のスイッチを押す音がする。はぁー、と上から声がする。アキオさんがため息をついたんだ。さっきの笑顔から疲れた顔になっている。ゆっくりと歩くアキオさんの周りをゆっくりとついていく。足臭いなあ。



「こら、かぐなよ踏むぞー」



 お疲れのアキオさんは首に巻いていたネクタイをシュルシュルと外していく。ソファにでーんと座ったその足元がアキオさんが帰ってからのぼくの定位置。それまではぼくがソファにでーんと座っている。


 台所からミカさんの料理する音が聞こえる。楽しそうな鼻歌も聞こえる。アキオさんもご機嫌みたいだ。少ししてミカさんがお茶漬けを持ってくる。アキオさんはいいねー!とニコニコして食べずにじっと見ている、ぼくならすぐ食べるけど何をしているんだろう。つい鼻を鳴らすとミカさんからさっき食べたでしょ?と言われてしまう。食べ始めたアキオさんをミカさんは見ている。ミカさんも一緒に食べたらいいのに。いつもそう思うけど、きっと何か理由があるんだろう。


 アキオさんの足元でいつもの2人を、ぼくは見ている。

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ぼくと2人 新吉 @bottiti

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