自主企画「一つのプロットで文体見せ合いっこ」という企画の為に書かれた本作。何気ない日常(同じプロット)を切り取り、各々の文体の違いを楽しむという素敵な企画なのですが、本当に様々な描写があるものだと驚くばかり。本作はまるで湯気の中を揺蕩うような、不思議な読後感を味わえます。ああ、癒される。
あー、お茶漬け食いたい…。なんて色気たっぷりのお茶漬けなんでしょう。艶っぽいですね。モジモジしたような空気感とか、それと対比的な擬音がとても鮮やか。他作品を読んでも分かる通り、紅蛇さんは短編の組み立て、ほどよい詰め込み、無理のない進行と展開がとても上手です。乱反射を繰り返す万華鏡のような紅蛇ワールドに浸れる一作ですね。