ダメ人間としての成り立ち
一体絶対まずどこからがダメ人間だったのか?
振り返ってみれば、生まれ持ってみたものが厄介だったのかもしれない。
両親が三十代に入って生まれた私は
一人息子だったのもあり、世間でいうところの甘やかされて育った人間であり
それもまた自分で自覚がある部分も大いにある。
ただそれ以上に、私自身が他人と大きく異なっていた幼児期の現象は
「人見知りをしない」という事だったようだ。
恐らく詳しく調べれば、発達障害とかそういう類になるのかもしれない。
ただそれは良くも悪くも私という一個人を築き上げるにあたり
重要な要素だったらしく
その影響は今でも色濃く出てしまっている。
「人見知りをしない」ということをあげた際、
羨ましいと思う人も多いのかもしれない。
恐らく他人から見れば、「人見知りをしない」子は
人懐っこく、誰にでも気軽に接するという意味で
可愛げがあるように感じたりするものかもしれない。
でも実際の現実はというと、
家族に接する距離感と、他人に接する距離感が同一であり
他人との距離感を計れない空気の読めない子でしかないのだ。
自分の思い通りにならなければ、泣いて喚いて暴力を振るい
自分の足元に地軸があるかのような振る舞いを繰り返し、
悪意がないという相当質の悪い鬱陶しさがある。
事実、小学校辺りまでの自分を振り返ると
多くの他人に迷惑をかけ、はた迷惑を繰り返し
何が悪いのかさっぱりわからないまま
帰りの会での吊し上げの常連という感じだった。
「今日○○くんがこういうことをしていました。
そういうのは良くないと思います。
なんでそんなことしたんですか、謝って下さい」
果たして何度この台詞を聞いたかもよくわからない。
職員室に呼び出され、放課後担任に叱られ続ける理由もよくわからなかった。
なんでと言われても、自分の感情の赴くままに振る舞っていた子供に
それをまた分かれというのも、酷な話でもあるとは思う。
当時の学友や担任教師、その他大勢の方々には今となっては
申し訳ない限りと感謝しかないのだけれども。
酷な話だなどと自己擁護をしているが
当時それが悪いことだということがわからなかったのかと言われれば
叱られてるんだから悪いことしたんだろうなぁとか
嫌われることをしちゃったんだろうなぁというところしか分からなかった。
バカと言われてムカついた腹いせに机を投げて
当たったのが女の子で死ねと言わんばかりの罵詈雑言を受けてなお
何故そこまで嫌われているのかさっぱり理解ができなかったのである。
ただとてつもなく理解ができなかったとしても
「嫌われることをしているんだ」という事と
「喧嘩の原因になるようなことをしているんだ」という事は
回数を重ねるごとに学習していった。
10歳の頃からの親友に言わせれば
「10歳にして、身の回りのものがなんでも凶器になるっていうことを
お前に身をもって教わったよ」
などと未だに言われる辺り、お恥ずかしい限りではある。
中学ともなると、周りもそもそも「かまう」ことをやめはじまる。
それがまた、良くも悪くも「嫌われるとかまってもらわれなくなる」ということを
学習したのかもしれない。
単純に、人というものが大好きで、生きて動いている人なら
例え、いじめっ子であったとしても中学くらいまでは好きだった覚えがある。
そういう学習を経て、やってはいけない事とやったら嫌われる事を学んでいったのだろう。
親友に説明されるまで知らなかったのだが、
当時の私は、前日に殴り合いの喧嘩を吹っかけてきておいて
翌朝に「おはよう!」と軽い感じで接してくるようなタイプだったらしい。
そりゃ迷惑通り越してどうにもならないな本当に、と後々になって
親友に謝り倒したことがある。
何よりも有り難かったのは、今世間であるようないじめももちろんあったが
それ以上に田舎だったせいか、皆優しかったということである。
多くの失敗を繰り返し、はた迷惑でとても鬱陶しい学習能力の乏しいやつが
何度も何度もやらかしても、どこかでかまってくれる人がいたのだ。
上に挙げてる親友もさることながら
その他大勢の人たちも相当の迷惑を被り、
学生生活に水を差すような邪魔者であったにもかかわらず、
見捨てないでいてくれた人が多くいてくれたというのは
それだけとても恵まれていて
それだけ贅沢な生き方をしてきたんだと思う。
そういう学生時代を送ってきたからゆえだろうか
持って生まれたダメ人間の部分をどうにかしたい気持ちと
己を正すことにより恩を返すという気持ちと
自分が逆の立場に立った時に
見捨てず助ける術を教えられるようになれれば
役に立てるようなるのが贖罪だと思うようになった。
しかし、それもあくまでも理想でしかないのである。
距離感の掴めない空気の読めないやつとして
持って生まれたパーソナルを正そうとした結果
また別の形として新しいダメ人間の形を生んでしまったのだ。
ダメ人間の理想と現実 月村 稔 @tsukimuraminoru
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