ぽいぽい書き箱

鹿野 ひふみ

暴走文系女子は書く

 震源地。

 ある高校にある部室棟のある一室にある文学部室。

 原因。

 我が校の女子生徒の叫び。

「なんか叫ばなきゃいけない気がしたんだ!」

 などと供述しており、反省の色は見えない。

 ―――――――――――――――――――――――

「ちょっとなにこれ! これ、もしかしなくても私のこと? 広報部はネタに困ってるの? だからって罪のない一般学生を震源地に仕立て上げるの? 起訴しなきゃ! 広重! 今すぐ広報部に決闘を申し込まないと! 文学部の名誉を返上しないと!」

 スマートフォン片手に叫ぶ少女の頭に紙束がハリセンよろしく叩きつけられた。

「叫ぶな震源地! あと広重って呼ぶな! 俺は歌川祐樹だって言ってんだろうが! それから、名誉を返上してどうするんだよ」

「くっ……汚れちまった悲しみに暮れる名誉を返上して、新しくまっさらな名誉を挽回してだな……」

「うまい言い訳してるつもりだろうけど、全然うまくないからな? まっさらなのはお前の頭だろ」

「そんなこと言って余裕ぶってると、将来髪の毛まっさらになるよ! いや、必ずそうなる。なぜなら貴様の毛根には私の怨念が込められているからな……!」

 わーわー。ぎゃーぎゃー。

 二つの震源地が同時多発地震を引き起こした。両隣の部室から「うるさい!」と壁を叩かれ、それを聞いた両隣のまた隣の部室も壁を叩く。そして小さな力が広がり集まったことで大きな部室棟が傾く大地震となった。

 ぐらり、と床が傾き静寂が訪れる。

 少女――文月文那が静寂を破った。

「……よ、四十五度?」

 続いて歌川も乾いた笑い声をあげた。

「……やったな、最新記録だぜ」

 そしてまた――静寂を喧しい足音が蹴散らした。

「またかぁ文学部――!!」

「生徒会長のさっちゃん! 違うんです、これはその」

「問答無用! また部室棟を傾けて! 弁償してくれるのか? これからの部費で償ってもらおうか!」

「落ち着けさっちゃん。これは俺たちの力じゃない。ここにいる部活のみんなが力を合わせた結果だ。そうじゃなきゃ、こんなに大きなものを動かす事なんて出来る訳ないだろう? ありがとう、みんなのお陰だ!」

「なんだ、その巨大プロジェクトを終えたかのような達成感溢れる弁護は! 部室棟をみんなの力で傾けて何が得られたんだ? 無駄な行為すぎて涙が出るわ!」

「人生に無駄なことなんて無いんだよさっちゃん」

 目を細め、心を落ち着かせようと合掌して言う文月にさっちゃん――佐藤さくらは怒り心頭の様子で怒鳴る。

「今ここで大声出してること自体が絶対無駄だよ!」

「人生に絶対なんてことも絶対無いんだよ……!」

 言い換えるようにつぶやいた文月を冷めた目で見ていた歌川はその一言を聞き、はっとした顔で文月の肩を掴んだ。

「待て文月、それは矛盾だ!」

「はっ! 私はなんてことを!」

「そこだけはマメなんだな、文学部……」

 怒らせていた肩を降ろし、佐藤はため息交じりに呟く。そこに先ほどよりも大きな足音が近づいてきた。

「昨日の今日ですよ、文月先輩」

「か、怪力の細田君……」

「何か言いましたか? 震源地の文月先輩」

「うん、震源地はやめよう。広報の細田君」

 いいところに、と佐藤は細田にこっそり何かを耳打ちした。しかしそれは文学部二人の前では意味をなさない。これから彼が何をどうするかなど、火をみるより明らかであった。細田がその指示に頷き、部室棟を出てから数分後――部室棟は大きく逆へ傾いた。

「オーライ! オーライ!」

「うるさいです、騒音先輩」

「騒音先輩はやめようか」

「うるさいです、騒音」

 もはや先輩とも呼ばれなくなった文月は、木造の廊下に崩れ落ちた。誰もなにも言わない。しばらくして揺れは収まった。佐藤はため息をついて文学部に背を向ける。

「仏の顔も三度までです。次同じことがあったら部室棟から文芸部の名前を消しますから」

「ありがたい……もう消されるかと」

 思わず呟いた歌川に、佐藤は小さく呆れたように笑って歩きながら答えた。

「ええ。私が会長でなかったら昨日の時点で消されていましたよ。こんな、歩く震源地のいる部活なんて」

 そうしてまた、部室棟に静寂が訪れた。

 先ほどの歌川の「みんなのお陰」発言により、部室棟にはもう二人以外誰もいなくなっていた。

 逃げ足の速い奴らめ、と心の中で悪態づいたが、結局今回の「巨大プロジェクト」の主催はどうあがいても文学部であることは変わりないので、歌川は頭を抱えた。

「おーい、歩く震源地。騒音。名誉返上。矛盾」

「どれだけ人の心の傷を抉れは気がすむのかね広重君」

「俺のことを広重と呼べなくなるくらいかな」

「私の心の跡形が無くなろうともそれは変わらない!残念だったな、広重君!」

「何がそこまでお前を駆り立てるんだ……!」

部室に戻り、傷だらけの机に腰かけた歌川はふと、文月の心を砕くキラーフレーズを口にした。

「そういえばお前、原稿の締め切り今日だけど」

「ぐっ……!」

「あ、心の壊れる音がした」

部室のドアにまたしても崩れ落ちた文月は、それでも近くに置いてあった自身の鞄の中からファイルを取り出した。歌川は目を丸くした。

「なんだ。書いてあるじゃん」

「……はい、編集長」

「苦しゅうない」

 しばらくその文章を読んでいた歌川は、急なめまいに襲われうめいた。

「ぐっ……!」

「どうしました編集長!」

「おいこれどうしたんだ……真っ暗じゃねえか……」

「そうなんです編集長! いつも通りの真っ暗でシリアスでダークでホラーな長編です!」

「いやいつもより暗いぞこれ! ダークって言うか漆黒? これ書いてるとき、何があったんだ……」

 そこで、歌川は文月が黙ってうつむいていることに気付いた。先ほどの狂気は感じられない。空っぽな深淵を覗いているような気持ちに、陥りそうになる。

 文月が、ふっと吐き出した言葉は重くすとんと落ちた。

「悩んでることが、あるんだよね」

「このままで、いいのかなって」

 そう消えそうな声で言った文月を、歌川は何も言わずに見つめた。文月は、またぽつりと言葉を零す。

「気づいちゃったんだ」

「今まで、目をそらしていたことに」

 はっとして、歌川は目を見開いた。うつむいた文月の視線の先。古い木の床に一滴の水が吸い込まれていく。

「まさか、文月……お前、気づいたって」

「私はこれに真っすぐ向き合っていかなきゃいけない」

 文月はゆっくり顔を上げる。


「私は――私は、コメディを書きたい!!」


「えっ?」

「ん?」

 ぽかんとお互いに顔を見合わせ聞き返す。

「なんて言ったの? 何に気付いたって?」

「えっ、何言ってるの? もう一回再現するの? やぁだよ恥ずかしい」

「どこにそんな要素あったの? 名シーンとして語り継がれる要素がどこにあるの? いいからなんて言ったか要約して、わかりやすく!」

 ドアから離れて近くの椅子に座った文月はその問いを一言で一蹴した。

「コメディを、書きたい」

「書けばいいじゃねーか」

「書けないから悩んでるんだよ、広重君!」

「書けるような材料が自分にないんだろ! じゃあ諦めろよ、騒音震源地!」

「……」

 黙ってしまった文月に、歌川は言いすぎたかと思ったがそれは即座に杞憂におわった。

「それだ!」

「どれだ!?」

 きらきらとした希望に満ちた目で文月は叫ぶ。

「だからそれだよ! それそれ!」

「だからどれだよ! 新手の詐欺か? それそれ詐欺か? あこそど言葉の使い方には気をつけろ!」

「何を言っているんだね広重君! 私はちゃんと、あこそど言葉を正しく使っているぞ! ちゃんと前文に『それ』が何であるか書いてあるぞ!」

「騒音震源地?」

「違う」

「諦めろ?」

「違う!」

「……書けるような、材料?」

「そうそれ!」

「材料さえ集まれば書ける気がする!」

「あとは文才か」

「材料さえよければ大抵よく見えるよ。料理然り、工作然り、写真然り、絵画然り!」

「今すぐにそれらの職人様に謝れ」

「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件には一切関係ありません。ノンフィクションの世界と混合しないよう、お気をつけてお楽しみください!」

「混ぜるな危険……じゃねえや、メタ発言はやめよう」

 閑話休題、深呼吸。

 歌川がため息交じりに言う。

「そうは言ってもな……俺は詩専門だ。小説はあんまり書けねえ。一年の木村は小説専門だけど、ファンタジー派だし。……ん? そもそもコメディってなんだ?」

 それを聞いて文月はふふん、と鼻を鳴らした。

「そんなことも知らないのかね、広重君。いいかいコメディというのはだね……」

「へえ、『人を笑わせることを主体とした作品、またはそれらの中の笑いを誘うやりとり』のことか。さすがグーグル先生、頼りになるぜ」

「悔しいけど人類の英知には勝てない!」

 大声で叫び、うつぶせになった文月を横目で呆れたように見つつ歌川は闇が具現化されそうな原稿をめくる。

「それで? 書けるジャンルが増えるのはいいことだと思うが、俺はなんも手助け出来ないぞ。材料っていったって、俺たちいつも笑えるようなことやってねえし」

「そうだよね……いつも真面目に、執筆したり執筆したり執筆やったりしてるもん。面白いことなんてなかなかないよね……」

「今日も部員は来ないけどな……」

「木村ちゃん無事かなあ」

 心配そうにつぶやいた文月に、歌川は首を傾げる。

「ん? 木村がどうしたんだ?」

「あ、昨日広重君はいなかったんだっけ?」

「ああ、腹痛の予定があってな」

「へえ……」

 沈黙。

「……腹痛の予定?」

「ああ、腹痛の予定だ」

「そっかあ、腹痛の予定かあ。それで昨日休んだのかあ…………木村ちゃんの敵ぃ!!」

 文月の蹴りが炸裂。慌ててよけた歌川に、文月は盛大な舌打ちを鳴らす。あまりの豹変ぶりに歌川も動揺を隠せずにいた。

「なんだなんだ! いきなりなんだ!」

「お前が学校を休んだせいで! 木村ちゃんは……!」

「だから木村がどうしたよ!」

 しばし沈黙。

「……あの、わたし無事です」

重ねて沈黙。

「……それで木村がどうしたって?」

「え? どうもするわけないじゃん?」

 一年女子の目の前で、歌川の頭はぶちっと音を立てた。

「よくも下手な茶番につき合わせてくれたな!」

「冷や汗書いてたくせに!! ちょっとマジになってたくせに!! やーいやーい!!」

「えっ、なに、先輩? ちょ、落ち着いてください!」

 互いの頬を抓りあい言い合う姿は、男子小学生の喧嘩のように幼いものだった。慌てて止めようと声をかける木村だが、わーわー喧しい二人に届かないとわかると覚悟を決めたように、深呼吸をひとつ。

「失礼します、先輩!」

「うわぁ!」

「いてっ」

 ぱあんっと清々しいほどにシンプルな音が二人の頭上ではじけた。木村の両手には、本物のハリセン。

「なんども言わせんといてくれはりますか? 今時しょうもない喧嘩せんといて……あっ」

 ぽかん。

 突然のなまった台詞に頭を押さえながらこちらを呆然と見つめる先輩二人に、木村はハッとした様子で口を押える。

 沈黙。

「木村ちゃん……大阪人だったんだ……?」

 盛大に首を振る木村に、歌川は言う。

「大阪風お好み焼きってなんか物足りないよな。俺は広島のお好み焼きのほうが好きだな~」

「何言ってんですか? お好み焼きは大阪の名物ですよ? 広島のお好み焼きなんかパクリじゃないですか」

「あ、木村ちゃん。私甘いもの食べたい気分」

「しょうがないですね、飴ちゃんあげます。歌川先輩も」

 イチゴミルクの飴が手のひらに置かれるのを見て、二人は息を飲んだ。

「大阪じゃん!!」

「大阪人ちゃいますって! あ、違います!」

 なお否定し続ける木村だったが、すでに先輩二人は「大阪人だったのか」と盛り上がっている。なんとか話を逸らそうと木村は「ところで!」と二人の会話に割り込んだ。

「先輩たちは何してたんですか? 先ほどさっちゃ……生徒会長に『君、文学部の一年ですよね? 君も大変な部活を選んじゃいましたね……』って言われたんですけど。……先輩たちは何をやらかしたんですか?」

「べ、べつに、何も! ねぇ広重!」

「超巨大プロジェクトの主催となり、見事成功させることによって会長は涙し、広報の一年は嘆息していた」

「すみません! よくわかりません!」

 二人の先輩は後輩にすべてを告白した。

 木村は海よりも深いため息をつく。

「……長い、ため息長いよ。木村ちゃん」

「さすが吹奏楽部兼部。肺活量のレベルが違うぜ」

「だって……呆れるどころでも、感心するどころでもないような話なんですもん」

「あれ? 前半しか聞いてない? 私の名シーンは?」

 木村は首を傾げて見せる。

「どこに名シーンなんてありました?」

「がーん!」

 心の中の効果音をそのまま口にし、項垂れた文月を横目に見ながら歌川は腕を組む。

「こいつがコメディを書きたいっていう話だ」

「ああ、あの独り芝居してたところですか」

 正直途中から見ていませんでした、と言い放つ木村に文月は項垂れきって蹲ってしまった。

「世界は私に厳しすぎる……」

「いやお前の存在が厳しい」

「先輩、元気出してください。先輩の身の回りにはコメディばっかりじゃないですか! 面白すぎて逆に失笑を誘うような感じの!」

 罪悪感を覚えた木村が何とかフォローしようとするも、歌川の「『失笑』の使い方間違ってるぞ」の一言で一蹴されてしまった。

「えっ。じゃあ失笑ってどういう意味なんですか?」

「思わず吹き出してしまうって感じの笑いだな。ついでに『爆笑』は大勢が笑うことであって大笑いすることじゃないぞ」

 完全に話題から疎外された文月はうずくまったまま動けなくなっていた。

(まって。私このままなの……? 私これでも部長なのに後輩すら、私より歩く言葉辞典に行ってしまうなんて……ああ、やっぱりそれはどうでもいいから起き上がるきっかけが欲しい)

 タイミングが分からず、動けなくなっていた。


「……先輩? 文月先輩?」

 蹲ったまま動かない文月に、木村が声をかけた。

(木村ちゃん! 私は信じていたよ!!)

 顔を上げようとした文月。

 そこに浮遊感が襲った。

(――え?)

 ふらっ、ぐらっ、ばたん!

 頬になめらかな木の感覚。

 混乱した文月の脳内に木村の叫び声が混じった。

「文月先輩ぃぃぃい!?」

「おい! 顔から落ちたぞ! 大丈夫か!」

「死なないで下さい先輩! 先輩!」

「くっ、どこから狙撃されたんだ……」

「ま、まさかあの組織にこの場所が……?」

「だとしたらここも危ない……じきにここも奴らに制圧されてしまうかもしれない」

「そんな! 文月先輩が手負いの今、私たちは全力で戦えません! そんな時に囲まれたら……」

「でもやるしかない。こいつの分まで……今世界を守れるのは俺たちしかいないんだぞ……」

「ちょっと待って、死んでないよ!」

 文学部名物、即興茶番は文月のツッコミで幕を閉じた。

「なんだよ。面白い倒れ方してたからフォローしたのに」

「狙撃されたってフォローある?」

 木村が文月に駆け寄って一言。

「先輩……さすが白虎の血筋! 傷がふさがってる!」

「ああ完全に世界観に飲み込まれてる! 最初から傷なんてないよ、落ち着いて木村ちゃん!」

「木村は何の血筋を持っているんだ?」

「私は朱雀、歌川先輩は青龍です」

 面白がって設定を聞き出す歌川に文月の怒りの鉄槌。

「いやあ流石、ファンタジー専門家。何処からそんな想像力と知識が出てくるんだ」

 つらつらと設定を語る木村に、殴られた頭をさすりながら歌川は苦笑すると木村は照れくさそうに笑った。

「昔からファンタジーの本を読み込んでいましたから。神話とかも、本当に大好きで!」

「やっぱり、材料がないと書けないよね……」

 肘をついてため息をつく文月に、木村は不思議そうに聞いた。

「材料って、コメディの、ですか?」

 頷いた文月に木村はきょとんとして言う。

「先輩の周りに沢山あるじゃないですか」

「ん?」

 首を傾げる文月に木村は呆れたように肩を落とした。

「ほら昨日、肉じゃがの話教えてくれたじゃないですか」

「ああ……母さんが肉じゃが作りたくて仕方ないって言ってて、私が『でもジャガイモ、今ないよ』っていったら『じゃあいいわ。今夜は肉じゃがのジャガイモ抜き にするわ!』って返してきて全力で止めた、って話?」

「それただの肉じゃねえか!!」

 思わず叫んだ歌川に頷く木村。

「それ、面白い?」

 きょとんとして聞く文月にも木村は頷いた。

「面白いですよ。そもそも二日連続で部室棟傾けたりしてる時点で可笑しいです。まあ私はまともですけど」

「そんなことないぞ」

「それはフォローになりません先輩」

 私は普通です。先輩方に比べれば平凡ですと繰り返す木村を見つつ、文月は「そうか……面白いのか」と呟く。

「じゃあ、今日あったことを物語にすれば……コメディを書くことが出来る……!」

 はっとして目を見開いた文月に歌川は

「混ぜるな危険って言ってなかったか?」

 と呆れていうが、否定はしなかった。

「おおお! そうか! 部活中に『コメディ』のネタがあったとは思わなんだ! 早速忘れないうちに書こう! これで私は光と闇を司る無敵の物書きに成れる! じゃあお先に帰るね~!!」

 鞄を床からひったくるようにして文月は早口でまくし立てると廊下をバタバタと走り去っていった。

「ひ、ひかりと……なんだって?」

「光と闇を司る無敵の物書き……なるほど、文月先輩もやはり私と同じ病を患っているようですね」

「それ厨二病だろ」


 文月(騒音震源地)の居なくなった部室は耳に痛いほど静かだ。

 帰り支度を済ませた所で木村がたまらず口を開く。

「不思議だったんですよね……あんなに面白いことに囲まれてる先輩が、なんであんなに暗いものを書くのか」

 カーテン越しの夕日が部室の黒板をぼんやりと照らす。それは暖かい景色だが、空気は無音に沈んで冷えていた。

 冷え性の歌川はネックウォーマーを鞄から取り出しながらふっと言葉を吐いた。


――もしかしたら。

「あいつにとっては、ちっとも面白くないものだったのかもしれないな」

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ぽいぽい書き箱 鹿野 ひふみ @novelsnumber273

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