「さよなら」に必要な時間

 こんなに薄っぺらい味のコーヒーを飲んだのは、初めてだ。口に入れた瞬間だけ苦く、飲み込んだ後味はほとんど水のようだ。立地のせいとはわかっているが、これで六百円とはひどい。

 広い窓の外には、六月に不似合いなほどの青空が広がっている。雲の白さに目を細め、腕時計を確認する。

 もうすぐ、午後三時だ。式が始まってそろそろ一時間になる。今頃は何をしているのだろうか。生い立ち紹介? それとも余興? あるいは上司のスピーチ? 披露宴などというものに出席したことのない俺には、よくわからなかった。

 ただ、小鳥が、白いドレスを着て微笑んでいる姿は、はっきりと脳裏に浮かんだ。そうだ。小鳥は笑っている。それだけは確かだと言えた。自らの幸福と、祝福に対する感謝を示すために、実際何を考えているかはともかく、微笑んでいる。目を僅かに細めて、薄く小さな唇の端をほんの少しだけ持ち上げた笑み。あどけなさと老いにも似た何かが同居した、小鳥にしか浮かべることができない、あの奇妙な微笑み。

 小鳥があんなふうに笑うようになったのは、一体いつからだったのだろう。

 自問するのとほとんど同時に、答えが浮かんだ。十七歳のときのこと、だ。高校三年生の、五月。俺と小鳥は、海に来ていた。


「とかげくん」

 十七歳になったばかりの小鳥が、俺を見上げて呼ぶ。高校生にもなってそんな馬鹿げたあだ名で俺を呼ぶのは、このおめでたい幼馴染だけだった。

 小鳥は薄いピンクのレースがついたカットソーに、白いデニムのショートパンツを身につけていた。柔らかく波打つ髪は、左耳の下で緩く括られている。あの頃は、今より髪は短かった。

「だーれもいないね」

 そして、声を上げて笑い、砂の上をぽんぽん、と二回跳んで見せた。

 町から自転車で三十分もすれば着くそこはとても小さな浜だ。シーズンに入らない限り、誰も好き好んで来たりはしない、忘れられたような浜。女子高生が男に「海を見たい」とでも強請らなければ、誰も思い出したりしないような場所。

 昼でも暗い色をした水。小さな波はテトラポットにぶつかって儚く白く砕け、潮の香りさえ、風向きのせいかほのかに漂うだけだった。あたりはとても静かだった。

「二人っきりだね」

 そう囁くように言った小鳥の頬は、僅かに赤みがかかっていた。俺は手を伸ばし、その頬に触れた。潤みかけた小鳥の色の淡い瞳を見据え、一瞬の沈黙の後、頬を抓った。

「いた」

 顔をゆがめる小鳥に笑みを漏らすと、手を離す。

「何か、期待したのか?」

 小鳥は唇を尖らせた。

「ひどーい」

 そして、顔を背ける。白いうなじに傾きかけた日差しが当って、産毛が金色に光っていた。俺は目を細める。

「お前は、美人だな」

 そう呟くと、

「知らなかったっけ?」

 と弾んだ声が返ってきた。

「ときどき、忘れる」

「じゃあ、ちゃんと思い出してね」

「善処しよう」

 ふふ、と小鳥は笑う。甘く崩れるような声。俺は小鳥に手を伸ばす。薄い肩を捕まえ、此方に引き寄せる。本棚から本を引き出す程度の力しか入れていないにも関わらず、小鳥の体は俺の胸に落ちてくる。小鳥の体はとても小さく、かすかに甘い匂いがした。子供のころから嗅ぎなれた、小鳥の匂い。腕の中の理屈に合わないほど小さな骨組み。俺の顎の下にすっかり納まってしまう丸い頭。力をこめると、小鳥の体は柔らかく撓り、しっくりと俺の体になじんだ。

 あまりにも、なじみすぎる。

 そう考えた瞬間、俺は小鳥を突き飛ばしていた。

 手に力はこもっていなかった。それでも小鳥はあっけなく俺の胸から離れた。二三歩後ろに下ると、顔を上げた。

 小鳥はまっすぐに、俺を見つめていた。何の音も聞こえず、何の匂いもしなかった。ただ、そこには小鳥がいた。俺の言葉を待つ小鳥が。

「ごめん」

 言葉はひとりでに、唇からすべり落ちた。そんなことが自分の身にも起こるのだと、そのとき初めて知った。自分に「謝罪」というものが出来たことも。実際俺はそれ以来、誰かに謝ったことなどない。

「いいよ」

 そして、小鳥は、微笑んだ。見たことのない、想像したこともない、笑みだった。本当なら、小鳥のような人間が、浮かべるはずもないような、笑みだった。


 もっとうまくやれなかったのだろうか、と、あれから十年が経った今、考える。何かの自己欺瞞を考え付くより先に、無駄だ、と結論が出る。俺はいつも最善を選んできた。少なくとも自分にとっての「最善」を。

 小鳥に初めて会ったときは、四歳だった。母親の地元に連れられてきた俺に、最初に出来た遊び相手だった。白いひらひらとしたワンピースと、白いレース編みの靴下という冗談のような恰好をしていた。くるくるに巻いた髪には大量のリボンまでついている。似合ってはいたが、悪趣味だった。母親が作ったというワンピースの感想を求められたので素直に答えたら、泣き喚かれた。うるさいので頭を撫でたら、あっけなく泣き止んで、べたべたとまとわりついてきた。小鳥は菓子とミルクの匂いがした。甘やかされた子供の匂い。

 一事が万事その調子だったというのに、小鳥は飽きずに俺にちょっかいをかけた。はっきり言えばうっとうしかった。小鳥が可愛いことは認めないでもなかったが、だからといって可愛さに意味など見出せなかった。通った幼稚園でも小鳥はいつでも輪の中心に居たので、わざわざ俺にかまう理由がさっぱりわからなかった。

 こんなことがあった。

 その日、俺は教室の隅で一人で積み木をしていた。あの頃はいつでも一人だった。他の園児と遊ぶように保育士にそれとなく注意されても、聞かなかった。話しかけてくる奇特なやつも何人かいたが、俺が視線も向けずにいると、すぐにあきらめて去っていった。

「とかげくん」

 聞きなれた声に振り向くと、小鳥がいた。俺は何も言わず、視線で言葉の先を促した。小鳥はにこ、と笑うと、俺の隣に座った。

「ひとりなの?」

「みればわかるだろ」

「うー。いじわる」

 しばらくの間、俺が城を組み立てる様を、じっと見つめていた。あとは屋根を残すだけ、という頃に、ようやく口を開く。

「とかげくん、ほかのことあそばないの?」

「あそばない」

「どうして」

「つまらないから」

 どうしたわけか、その答えは小鳥のお気に召したらしい。にっこりと、花が開くように可愛らしく、小鳥は微笑んだ。そして、俺の耳に唇を寄せて、妙な早口でまくしたてた。

「とかげくんは、これからも、だれともあそんじゃだめだよ。だれともなかよくしちゃだめ」

 そして、きらきらと熱っぽい瞳で俺を見つめた。ふと思いついて、俺は口を開く。

「わかった」

「ほんとう?」

 菓子とミルクの匂いが、強く鼻についた。俺はにっこり笑って、頷いた。

 そして、

「だから、おまえもちかよるな」

 と表情を消して、言い渡した。

 そのときの小鳥の顔は、見ものだった。笑みが凍りつき、上気していた頬の色が、覚めていく。この顔を作り出したのが自分だ、ということに、俺は幼い心臓を高鳴らせた。

 その後鳴り響いた耳を覆わんばかりに姦しい泣き声でさえ、心楽しい音楽だった。

 うるさいからではなく、もっとごく自然な温かさで、俺は小鳥の髪を撫でた。柔らかな、甘い匂いのする髪の毛が、さらさらと手のひらの下を滑る。

 簡単に小鳥は泣きやみ、俺を見て微笑む。なんて可愛いんだろう、と俺は釣られて微笑み、小鳥の髪に指を絡め、一気にそれを引っ張った。


 考えてみれば、あれが始まりだったのだ。俺と小鳥の間の、奇妙な了解の。淫靡というにはあまりにも些細で、健全というには人目をはばかるもの。俺と小鳥の間にしか存在できない、淡い、息を吹きかけただけで消えてしまうような、淡い、快楽に似た何か。

 十八年、二人でそれを弄んだ。

 何かの拍子にそれが、他のものに変らないかと、二人で、小鳥のほうが少しだけ必死で、弄り回した。変りそうなこともあった。十七歳のあの日まで、俺も小鳥も、変るだろうと予感していた。そうしたいと、多分俺も思っていた。多分。今ではよくわからないけれど。

 必死になっていたのも小鳥なら、諦めたのも、小鳥だった。大学を卒業する春に、小鳥は恋人を作った。よりにもよって、俺を介して知り合った男と。俺にはつまらない男に見えた。確認したわけでもないが、小鳥の意見もそう違いはないと思う。ただ、真面目で、優しく、善良で、何より、まともだった。それは大切なことだった。幸福になろうとする女にとっては。少なくとも。

 水野君と付き合うよ、と小鳥が言ったとき、俺はDSをしていた。小鳥から借りたDS。子供のころからずっと、ゲーム機は小鳥か、その兄に借りていた。うちは貧しかったのだ。

「へえ」

 と俺は何の感慨もなく、答えた。DSの画面から、顔は上げなかった。

「おめでとうとか、ないの」

「どうしてそれを俺に言う」

「ただの世間話だよ」

「そうか」

 俺は言うべき言葉を捜しながら、タッチペンで画面を叩く。言葉はなかなか見つからず、沈黙をかちゃかちゃ、と乾いた音が埋めていく。小鳥が、笑みともため息ともつかない声を漏らした。俺は、顔を上げない。

「こういう日が来たら、とかげくんがなんて言うかって、ずっと考えてた」

「ああ」

「怒るかな、とか、悲しむかな、とか。色々考えてたけど、よくわからなかった。なんだか、どれもおかしいような気がしたし」

「ああ」

「怒ったり、悲しんだり、しないよね。とかげくんは。やっぱり」

 俺は顔を上げた。小鳥は、微笑んでいた。十七歳のあの日、あの瞬間から、小鳥の小さな顔に刻み込まれてしまった微笑み。

「そうしてほしければ、そうしてやるけど」

「嘘」

 間髪いれずに、小鳥は答えた。小鳥は正しい。俺は怒ることも、悲しむこともできない。もう、お前を傷つけて、それを喜ぶことも、できない。もう、遊びはおしまいなのだと、俺にはわかった。そして、小鳥にも。

 俺は、DSに視線を落とす。

「とかげくんも、彼女、作りなよ」

 けっこうひどいことを言うなこの女、と思ったが、無視した。


 大学を卒業して、小鳥は広告代理店の営業になり、俺はそのまま院に上がった。もう会わなくなるのではないかと思っていたのだが、小鳥の家族が俺を家に呼びたがるので、半年に一度は会った。特に話をするわけでもなかったが、小鳥は幸福そうだった。水野のおかげとは思わないが。

 今年の三月、本当に久しぶりに、小鳥から連絡があった。会いたいと言うので、応じた。小鳥が指定した待ち合わせ場所は、近所の公園だった。子供のころ、母親に連れられてよく行った場所。

 待ち合わせの十分前に行くと、小鳥はもう待っていた。水色のカーディガンに、オフホワイトのロングスカート。若奥さんみたいな恰好だな、と思った。似合っていたが。

 声をかけようとしたのと、小鳥が俺に気付いたのが、ほぼ同時だった。いつもそうだったな、と思い出し、小鳥も同じことを考えているのが、表情でわかった。

「早いな」

「やることなかったから」

 小鳥はベンチに腰掛けていた。子供のころ、ここは母親たちの席だった。俺と小鳥は、座ったりしなかった。砂場に行ったり、ジャングルジムに登ったり、滑り台の途中にひっかかっていたり。子供が減ったのか、時間が悪いのか、公園には誰もいない。

 並んで座った瞬間に、小鳥が俺を呼び出したわけがわかった。別に超能力を使ったわけでも、人並みはずれた洞察力を発揮したわけでもない。

「結婚するのか」

 もったいつけずに切り込むと、小鳥は小さく頷いた。細い指に、金属が光っていた。やたらに輝く小さな石は、多分ダイヤモンドだろう。

「四年か、長いな」

「そうかな」

 小鳥の言いたいことはすぐにわかった。俺たちは関係を固めるまでに、十八年も掛かったわけだ。四年で結婚に到達するのは、恐るべき速さだとさえ言えるかもしれない。

「ちっちゃいころ」

 これだけで、俺は小鳥が何を話題にしようとしているのかわかった。四年近く二人きりで話をしていなくても、俺には小鳥のことが、よくわかった。

「うん」

 促すと、小鳥は小さく笑った。俺がわかったことが、わかったのだろう。

「大きくなったら結婚しようって、言ったよね」

「俺は断った」

「そうだよ。それで、私は泣いた」

「別に泣かせるつもりで言ったんじゃない。単純に、結婚するのは嫌だと思っただけだ」

「そっちのほうがひどいよ」

 ふふ、と小鳥は軽やかに笑う。

「とかげくんのこと、好きだったなあ」

 好きだと言われたのは、そのときが初めてだった。

 俺は何も言わなかった。無視したのではない。言うべき言葉が見つからなかったのだ。

 しばらく、二人で黙っていた。これがきっと、小鳥と会うのは最後だろう、と考えたが、それをどう受け止めていいのかわからなかった。公園の入り口に一本だけ立っている桜はまだ固い蕾をつけているだけで、昼過ぎの空気は頬に柔らかに冷たかった。

 もし俺がもう少しまともだったら、小鳥と結婚して、子供を作って、二人で公園に来るようなこともあったのかもしれない、と考えて、一瞬思考が真っ白になった。そんなことはありえなかった。他人に上手く理解してもらえるとは思えないが、俺にとってそれは、自分が女だったら、と考えるのと同じぐらい、ありえないことだった。

「結婚式、六月にするの」

「へえ」

「私も水野君も、地味でいいって言ったんだけどね、お母さんたちがこういうのはけじめだからって」

「行かないぞ」

「そうだろうと思ってた」

「来てほしいのか?」

 小鳥は首を振った。子供のころはかなりきつく癖が掛かっていた細い髪の毛は、もうごくゆるい流れしか残していない。

「あ、でも」

 いいことを思いついた、とでも言いたげに、小鳥は笑う。

「攫ってくれるなら、ついていくよ」

「はあ?」

 さすがにそれは予想外だった。小鳥はくすくす囀るように続ける。

「扉をばーん、ってしてくれて、ウェディングドレスの私の手を引いて、どっかに連れ去ってくれるなら、ついていくよ。どこにでも」

 言葉を切り、どうにか笑みの残滓を顔に貼り付けたまま、繰り返す。

「どこにでも」

 その声は、少しだけ震えていた。

 どうしてだろう。小鳥の強張った唇の端を見つめ、自分の胸の奥に、一滴、覚えのない何かが落ちるのを感じていた。漣のように、疑問が広がる。

 どうして俺は、じゃあ、攫いに行ってやる、と、言えないんだろう。

 答えは、わかっていた。二十七年生きてきて、そんなことを疑問に思ったことさえ、なかった。いつだって俺は、小鳥よりも自分を選んできた。それを悪いと思ったことも、間違っていると思ったこともない。それなのにどうして今、こんなに何もかも取り返しがつかなくなって初めて、小鳥を選んでやりたいなんて、考えてしまうんだろう。小鳥を抱きしめてやれたら。何もかも全部捨てて俺を選べと言ってやれたら。もし、俺が。

「馬鹿だな、お前は」

 結局俺が口にしたのは、そんな言葉だった。小鳥は微笑む。十七歳のあの日と、同じ顔で。

「とかげくんに言われたくないよ」

「そうだな」

 俺は認める。小鳥は微笑んでいる。その小さな、柔らかな線で出来た横顔を、俺は覚えておこうと決めた。

「小鳥」

「何?」

 この、首を傾げたときの、顎の線も。髪が肩を滑り落ちる音も。

「お前は、美人だな」

 唐突な言葉に、小鳥は微笑んだ。

「思い出した?」

 俺は微笑む。忘れたことなんてなかった。

 小鳥。お前はきっと、幸せになるだろう。水野はお前に、平凡で、ちょっと退屈で、でも安心で、まともな幸福をくれるだろう。もし水野が途中でリタイヤしても、お前はすぐに他の誰か、真面目で、優しく、善良で、まともで、ちょっとつまらない男を見つけるだろう。誰もがお前を幸福にしたいと願うだろう。そうでなくてはいけない。

「そろそろ、帰るね。今日はありがとう」

 にっこりと、混じりけのない笑顔で、小鳥は笑い、立ち上がる。俺は座ったまま、それを見上げる。

「幸せになれよ」

 あきれるほど凡庸な言葉に、小鳥は微笑んだ。

「言われなくても」

 そして、去っていった。弱い風が、長いスカートを揺らし、細い足首が見えた。その姿が見えなくなっても、俺はベンチに座っていた。

 なんだか泣きたいような気分だったが、泣かなかった。そもそも、泣くとはどういうことなのかさえ、うまく思い出せなかった。


 それが、小鳥に会った最後だった。本当の最後だ。もう、二度と会わない。そう、決めている。別れの言葉一つ告げなくても、小鳥にはわかっているだろう。

 そもそも、俺たち二人がこんなに時間をかけてまでやり遂げた、たった一つのことが、別れなのだった。それ以外には、結局何もしなかった。俺と小鳥は互いにこれ以上近づくことが出来ないと知っていて、でもぐずぐずと、決定的な別れを、告げることができずに居た。たった、それだけのことだった。俺と小鳥の二十三年が、そのまま二人の別れの言葉だった。

 コーヒーを口に流し込み、目を閉じる。小鳥のことを思い出す。四歳の小鳥。十七歳の小鳥。二十二歳の小鳥。二十七歳の小鳥。

 二十三年分の小鳥が、俺の中にあった。泣き顔も、笑顔も、怒った顔も。膨らました頬。寄せられた眉。見開いた目。声を立てて笑うときにだけ浮かぶ、小さなえくぼ。細い手首。浮き出した鎖骨。そして、あの微笑み。それを思い出すと、心臓が不器用に軋んだ。

 あの微笑みは、俺が作ったものだった。小鳥の肉体と精神を使って、紛れもない俺が、作り出したものだ。俺が小鳥に残せた、たった一つのもの。

 目を開くと、青空が目を灼いた。目を細めて、滑走路を見下ろす。整然と並んだ飛行機が、空へと滑っていく。俺が乗るのは、あの中にあるのだろうか。

 そろそろ時間だ。伝票を取って、立ち上がる。

 大丈夫だ。俺の中には、小鳥がある。少し多すぎるぐらい。溢れてしまいそうなぐらい。これから一生会わなくても、平気なぐらい。軋みを上げる心臓を、いとおしむことが出来るぐらい。



 さよなら、小鳥。どうか幸せに。

 たまに俺を思い出して、少しだけ嫌な気分になれ。

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とかげくんと小鳥ちゃん 古池ねじ @satouneji

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