第115話
パタパタしながら希美子さんの背中をタップする黒蜜おばば、それに気づいた希美子さんが慌てて黒蜜おばばから手を離す。
「フゥ、やっと息が出来る。後ろにいる小さいのが妹の餡子、金髪の子が姪のたると、プラチナブロンドの子がバーバヤガで赤っぽい髪の子がシナモン、そして恵ちゃん。皆んな一人前の魔女です。そしてフワフワ浮いてるのがそれぞれの娘達で」
「棗です」
「楓ちゃんです」
「マカロンなの」
「タマーラよ」
「デニッシュでしゅ」
とフワフワ浮きながらペコリとお辞儀をする。
目をキラキラさせた希美子さんが
「魔女さん達にちびっこ魔女っ子、かわゅすぎ〜、私の事は希美子さんと呼んでね」
と身を悶える。
それを見た棗ちゃんが
「ちびっこは、まだ居ます」
とキャンピングカーを指差して笑う。
あら?
キャンピングカーの後部ドアの階段を『よいしょよいしょ』と怪力ちびっこレッサーパンダとチヨさん達が降りてきた。
そして天井の換気口から恵ちゃんの使い魔で台湾リスの王さんが顔を出してる。
ちびっこ怪力レッサーパンダ達ったらいつの間にキャンピングカーに乗ったのかしら?
希美子さんの前にレッサーパンダ達と台湾リスの王さんが並びお辞儀をし、チヨさんが
「どうも、おおきにチヨ言います。蜜ちゃん、キャンピングカーの伊達男はんが余り作らへん、おばんざいをつくりましょか?肉じゃが、玉葱入りのコロッケとかかき揚げの天麩羅とか?希美子はん、ジャガイモありまへんか?」
「ジャガイモもトウモロコシもトマトも夏野菜とかも色々、近所の農場から分けて貰えるわよ。モッラレラチーズにベーコンや生ハムにイベリコ豚の肉なんかも揃うわよ。後は、欲しい物は無いかしら?」
と希美子さん。
「卵が有れば、マヨを作ってポテサラにしまひょうか!玉葱たっぷりの」
とチヨさんが嬉しそうに頷く。
『おいおい、マヨネーズを作ったらこちらにも回してくれよな、チヨさんよ』
とキャンピングカーの外部スピーカーから声が聞こえて車体がカタカタと揺れる。
「あっ、希美子さん紹介が遅れてすいません。これが意思を持つ魔道具のキャンピングカーで、料理上手な伊達男です。フィアットのトラックとイタリア製のキャンピングカー部分に意思を持たせたら中身が、料理上手でワインやチーズにうるさいイタリアの伊達男になってしまったんです。美味しい創作イタリアンが得意なんですよ」
私は、ペチペチと真っ黒ボディのフロントフェンダーを叩きながら言う。
『ご挨拶が、遅れて申し訳ない。伊達男と呼んで下さい希美子さん。貴女の心を虜にする様な創作イタリア料理の数々をお届けしましょう』
とキャンピングカーのライトをウインクみたいに片側だけ点灯る。
「ふぅ、ありがとう伊達男さん、チヨさん。伊達男さんと比べるとうちのヨンマル君は、何だか子供っぽいわね」
と、モンスターズの玉葱の収穫を手伝いながらウロウロしているヨンマル君を見ながら希美子さんは溜息をつく。
「あー、それは、多分持主の方が移動手段としてだけでなくて「遊び友達」と思って長く接していたので楽しい事が優先の付喪神になったと考えられます。でも、楽しそうで優しい子で良いじゃないですか持主に家族として扱われてた証拠ですよ」
小学生みたいな見た目の餡子さんが、キリっとした魔道具製作者の顔になり言う。
「そうね、ヨンマル君に乗る時は一緒に遊ぼうみたいな感じだったからそれで良いのかもねぇ。のんびりとした寿家に合ってるわね」
ウンウンと頷く希美子さん。
「そうだチヨさん、伊達男さん、どんな食材が欲しいの?農協や道の駅に連絡したら大体そろうわよ?小麦粉やお米、ジンギスカン用のラム肉に卵、バター、牛乳に生クリームとか」
『オウ、小麦粉があるならビザを作りたいな、発酵に少し時間がかかるから先ずは小麦粉をお願いするぜ、希美子さん』
伊達男が早速注文する。
「希美子はん、お米があるならお水を吸わせるからお米も先にお願いしますわ。普通の白いご飯にチラシ寿司、炊き込みご飯、腕がなるわ」
と、チヨさんが片腕を高々と上げた。
「ビザならメンテナンスで伊達男のオープンを少し大きくしたけど足りないね、この人数じゃ」
餡子さんが顎に手を遣りながら考えている。
「移動式の石窯ならもう一つの納屋にあるから安心せい。ピザにも玉葱たっぷり乗っけると甘くて美味いゾ」
両手にトマトやキュウリ、アスパラガス等を抱えた寿さんがいつの間にか帰って来て言った。
小さな魔女達が
「石窯でピザ嬉しい〜」
とはしゃいでいる。
「チヨさん、オニオンリングフライ!とビール!!」
と大人の魔女達。
「「蜜ちゃん、玉葱皮剥きと仕込み大量にたのむわよ(頼むぜ)」」
チヨさんと伊達男が私に言った・・・。
辛いわ・・・本当に辛いわ・・・。
何で、こんなに辛いのかしら?
と泣きながら大量の玉葱を仕込んでいる私だった。
甲斐犬黒蜜のお使い 牛耳 @usimimi
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