第4区 牛頭宇志彦教諭左遷の件 1. 若猪野次郎③
-2000/10/09 AM11:03 県庁北1000メートル-
向かい風が強くなりだした。
後ろに2校、前に3校、さらに前に2校。
県大会出場の前には、少なくともこの集団に、あと…
8キロメートルで追いつく必要がある。
最後の3キロは天馬さんだとしても、
「さらに前」を見据える場合は、
俺・若猪野二郎と、そのあとに控えるゴクウが粘り切らなければ間違いなくうまくいかないだろう。
後ろには、小幡中の陰野さんと、刀根中の紀野が追ってきているはずだ。
ペガサスさんが言うには、陰野さんは春以来の不調ながらも、3000メートルで9分50秒をコンスタントに出している。
個人で陸上の大会に出場し、上位となるには不十分だが、中学駅伝に限っては、タイムの「最悪」が見えている点で、十分すぎる人材だと言っていた。
「中央のフーマとカゲのどっちもが本調子だったら、市でも県でも、優勝校は間違いなく小幡中だ」
三年生の不参加が確定したとき、先輩がボソッとつぶやいていたことだ。
実際、フーマこと風間先輩は調子を7割方回復させているようで、ゴズと同タイムの区間4位ときている。県大会の時にはどうなることか、である。
八咫中の福原、城北中の千葉さん、そして付属中の斯波さんが前にいる。
が、斯波さんのペースは徐々に落ちてきているのが、僕から見てもわかる。
前の二人から引き離されている。
ペースとしては、福原と千葉さんが僕と同じくらいだろう。差が全く縮まる気配がないが、引き離される気配もない。
逆に、斯波さんは間違いなく僕に追い抜かれる。
そのさらに前には、中央中の井伊さんと、北総社の萩がいるはずだ。
ゴズ曰はく、萩は市内の2年生の中で、中央の服部・附属の細川に次ぐ実力者。
新人戦のあたりまでは調子を伸ばせなかったものの、本来はゴズを上回る腕前のようだ。
確か、中継所では一番目にタスキを渡したのは中央中。
順位が入れ替わるかもしれない。
それにしても、俺が駅伝部に入る、
そのきっかけになった、サッカー部の3位決定戦に端を発するあの事件。
そのさらに奥の、「どうして自分だけが?」という真相が明らかになったのは、
今からわずか一週間前という、非常に近い時期であったのだ。
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