第2区 生徒会役員選挙の件 18. 牛頭義裕⑦

-2020/10/09 AM10:50 県庁北-



その時の僕には懸念が二つあった。

一つ目は、リュウノスケがどこまでしのいでくれるかということ。そしてもう一つは。

「お疲れ様。区間3位おめでとう」

順位の確認が終わり、解放されたらすぐにシーカ先輩が来てくれた。

「ありがとうございます。ただ、気になることがあるんです」

「わかってる。私のところにも何も異常の連絡はなかったわ。標的は、ゴズくんじゃなかったわ」


そう、標的が僕ではなかったのだ。最大の機会である走行後、その隙の間に攻撃が与えられることはなかった。

オロチがカメラでとらえ、メグが折り畳み短弓を携帯していたのもあったのだろうか。向こう側があきらめてくれたのでくれればそれでよし。

だがしかし問題は、それがこちらの思い違いであった場合だ。そもそも僕に対する攻撃が発生するという前提すらも間違っていたのかもしれない。


すぐに競技場に戻るシーカ先輩ともに北へあるいていくと、待機中のメグと目が合った。

十二山中のジャージやベンチコートではなく、ジーンズとパーカ、そして伊達と思しきメガネを身に着けている。

1時間ほど前に、女子2区を走り終えたばかりである。事前の指示通り、待機中は自らの身元を極力ばらさないようにしてくれている。

彼女自身は警官に付き添ってもらっている。あのような事件と予告状があった以上、一人にしておくのは危ないということで、県警の許可が下りた。

万一の事態のために、自身だけでも守れるようにと、日辻家特製・折り畳み式携帯短弓の所持は許可されていた。


「明らかにおかしいぞ」

「どういうことなの、途中」

メグも異変に気が付いていた。表情が強張った冷静さになっている。

僕自身も分からない。

頭から数多の情報を手繰り寄せ、予告状の意図を考え直す。


「君たちは早く競技場へ戻った方がいい。特に牛頭君、君が作戦を立案しているんだろう?」

警官の忠告を受け、僕とシーカ先輩は急ぎ、競技場にいるオロチたちのもとへと向かった。


リュウノスケはゴールしただろうか。

無事だろうか。


そして、彼にも何も起きなかったとすれば、

後の4人に何をするつもりなのか。


相手は、何をもって復讐とするのだろうか。

狙いは、誰だ。


相手が最も屈辱と感じたのは、何なのか。





-2000/10/09 AM10:51 県庁北-


ヨシヒロたちを見送った後、弓を手に私は考えていた。

相手は本当に何を考えているのだろう。

オロちゃんからの連絡で、リュウ君の無事はわかった。


相手が本当に恨んでいるのは誰なのか。

あるいは、相手はどうしたら恨みを晴らせると思っているのだろうか。


ここまで、相手はヨシヒロ狙いだと勝手に思っていたが、

なにか致命的な勘違いをしているのではないか。

そう思い直す。

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