第3話 モフロボとぼく

 ぼくは犬だ。名前はマル。この家で優しい2人と暮らしている。とある日そいつは突然やってきた。2人とも新しくきたそいつと楽しそうにしている。名前はボロ。ぼくは挨拶をしたが、向こうは無視。感じ悪いなあ、だけどぼくは先輩だから怒らない、怒らない。


 ぼくは次の日も挨拶に行った。びっくりした、突然いなくなっているから。慌てて寝床に戻って教えると、戻ってきたときにはまた鳴いていた。お腹すいたって言ってるのに、なんでご飯をあげないんだろう?そいつの前にもぼくのご飯を置いた。少しね、少し。食べなかった。きっとぼくと同じで食べたくないんだ。


 ぼくは返事をしないそいつに怒っていたが、そのうち返事ができないことに気づいた。そのうちぼくみたいに迎えに行くことも、ぼくみたいに散歩することも、ぼくみたいに食べることも、ぼくみたいなことはできないんだと気づいた。だけどぼくよりもふかふかでもふもふしてる。ぼくは、ぼくは、


 ぼくはそれはもう怒られた。あんなに優しい2人があんなに怒るのを初めて見た。ぼくがそいつを壊したからだ。そいつは動かなくなった。そいつは動かなくなった。なんで壊したのかって、それはわからない。ただ、よくわからなかったからだ。


 はずなのに?


 次の日、そいつは動きだした。ご飯も食べないし、外に行こうともしないけど、ぼくに向かって遊ぼうと言う。話ができる、じゃれることができる。ぼくはそいつと遊んだ、嬉しかった、楽しかった。すぐに2人に報告しに行った、2人は驚いて怯えた。


 彼はいなくなった。壊れたのに動く彼はよくわからないものだから2人はやっつけたんだ。ぼくのせいだと思った。ぼくがやっつけたのと同じ理由だ。


 ぼくらはマルボロ、アキオさんの好きなもの。やっとミカさんのお腹が膨らんで、2人は大喜びした。アキオさんはモクモクをやめた。アキオさんはぼくがいなくなったら寂しいなあとよく言うようになっていた。ずっと一緒だったからなあ、いなくなったら大変だ、と。まだ一緒にいたいなあ。ボロがきたのはそんな頃だ。ぼくは一緒にいるよ、まだ2人といるよ。2人が3人になってもまだいたいし、すぐ疲れるけど元気に鳴くし、散歩も行きたい。ぼくはいなくならないよ。



 ぼくはぼくは、ぼくは犬だ。名前はマル。この家のマル。ごめんねボロ。ごめんなさいミカさん、アキオさん。ぼくはもう2人といられないんだ。ぼくはアキオさんの足元で眠った。


 ありがとうね、マル。

 そう2人の声が聞こえた気がした。

 ワンワン

 ボロの声が聞こえた。


 おやすみ、マル。

 うん、おやすみなさい。

 2人と1匹に挨拶して、ぼくは眠る。

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モフロボ 新吉 @bottiti

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