俳諧は薬籠中の雲の峰

 俳諧はいかい薬籠中やくろうちゆうくもみね


〔季語〕

 雲の峰(夏)


〔語釈〕

「俳諧」は俳諧の連歌(連句)・発句ほっく・俳文等。俳句は「俳諧の発句」の略。

「薬籠中」は自家薬籠中。「自家薬籠中の物」は、自分の思うままに使えるものまたはひと(唐書元行沖伝)。

「雲の峰」は入道雲。


〔大意〕

 俳諧(俳句)はさまざまな題材を自家薬籠中の物とし、入道雲のように変幻自在なものではあるまいか(そのように詠みたいものである)。


〔補説〕

 俳諧論(俳句論)じみたものを俳句形式でした。


〔参考句〕

 雲の峰いくつ崩れて月の山 芭蕉

 湖やあつさをゝしむ雲のみね 同

 野社に太鼓うちけり雲の峰 北枝ほくし

 雨と成恋はしらじな雲の峰 蕪村

 廿日路はつかぢの背中にたつや雲の峰 同

 雲のみね四沢したくの水のかれてより 同

 龍の落し畑見にゆくや雲の峯 几董きとう

 静さや湖水にうつる雲の峯 霞東かとう

 葬礼の田中をゆくや雲の峯 道彦みちひこ

 早稲わせの香やさりも見ゆる雲の峰 一茶

 行めぐる田の水音や雲の峰 卓池たくち

 魚の寄る藻の下かげや雲の峰 井月せいげつ

 水涸れて城将くだる雲の峰 夏目漱石

 わら家根や南瓜咲いて雲の峯 村上鬼城むらかみきじょう

 雲の峰石る斧の光かな 泉鏡花いずみきょうか

 虚無僧の二人つれだつ雲の峰 同

 溝川にはちす咲きけり雲の峰 同

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