青春の一幕爆ぜて遠花火

 青春せいしゆん一幕ひとまくぜて遠花火とほはなび


〔季語〕

 遠花火(秋)。一説に、現在は(夏)。


〔語釈〕

「爆ぜる」は草木の実などが熟しきって裂ける。割れてとびちる。はじける。破裂する。


〔大意〕

 遠くに花火が上がり、青春の1ページがはじけるのであった。


〔補説〕

 私は青春をうんぬんするには年をとりすぎており、この句は10代くらいの人間になりかわって詠んだもの。


 下五しもごを「花火かな」等とすればすっきりおさまるわけだが、内容に寄せて現代俳句的に「遠花火」とした。なお、単に「花火」というと俳句では打上げ花火のことをいうようで、一般家庭で楽しむ花火は特に「手花火」といって区別されているらしい。


〔参考句〕

 てつせんは花火の花のたぐひかな 季吟きぎん

 一雨が花火間もなき光かな 其角きかく

 ものたいて花火に遠きかゝり舟 蕪村

 花火尽て美人は酒に身投げけん 几董きとう

 ふりかゝる花火の花や城の松 内藤鳴雪ないとうめいせつ

 化学とは花火を造る術ならん 夏目漱石

 温泉の村に弘法様の花火かな 同

 水の上火龍の走る花火かな 村上鬼城むらかみきじょう

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