終るべき命なりしを春の夢

 をはるべきいのちなりしをはるゆめ


〔季語〕

 春の夢(春)


〔語釈〕

「べき」は、ここでは適当の意を表す。……して当然な。……するはずの。


〔大意〕

 とうに終わっているはずの命であったものをいまだにこのようにして生きながらえているのは、たましいが春の夢を見つづけているのであろうか。


〔補説〕

 すこしまえまで、なぜ自分はいままで生きてこられたのだろうかと思うことしきりであった。それというのも、私はとても生存に適した人間ではないとの思いがあったからである。されば、これは夢なのだと考えるほうが自然なようでもあると思った。実際には、まわりの人たちが私が生きていけるように心を砕いて身を粉にした結果なのだろうが。


〔参考句〕

 御手打の夫婦めをとなりしを更衣ころもがへ 蕪村

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