清水の舞台消去る朧哉

 清水きよみづ舞台ぶたい消去きえさおぼろかな


〔季語〕

 朧(春)。『俳諧二見貝はいかいふたみがい』(1780年)に所出。


〔語釈〕

「朧」はぼんやりとかすんでいるさま。特に春の夜についていう。


〔大意〕

 清水の舞台が消え去る春の夜のおぼろだなあ。


〔補説〕

 春の夜の幻想的な雰囲気を伝えようとした。舞台→能楽→幻想的→朧、また清水→桜月夜→朧というような連想が働いているように思う。「清水の舞台から飛び降りる」という慣用句を思うなら、教訓めいたものを見出しうるかもしれない。


〔参考歌〕

 清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みな美しき 与謝野晶子


〔参考句〕

 辛崎からさきの松は花より朧にて 芭蕉

 炭焼や朧の清水鼻を見る 其角きかく

 鉢たゝき来ぬ夜となれば朧なり 去来きょらい

 辛崎のおぼろいくつぞ与謝の海 蕪村

 春雨の中におぼろの清水哉 同

 花ぐもり朧につゞくゆふべかな 同

 白魚のどつと生るゝおぼろかな 一茶

 菜の花に朧一里や嵯峨の寺 内藤鳴雪ないとうめいせつ

 行き行きて朧にしやうを吹く別れ 夏目漱石

 まんまるな山々ならぶ朧哉 寺田寅彦

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