春の山古事記の民も遊ぶらん

 はるやま古事記こじきたみあそぶらん


〔語釈〕

「春の山」は(春)。

「古事記の民」は専門用語ではない。「啓典の民」(イスラム教徒から見てユダヤ教徒、キリスト教徒のこと)という語から類推して言った。古事記の時代から今(句の時間)に至るまでアイデンティティを保持している土着の部族くらいの意味。

あそぶらん」は、遊んでいるのだろう。


〔大意〕

 春の山よ。そこには古事記の民も遊んでいるのだろう。


〔解説〕

 古い由緒を持つ部族の人が山の奥まったところで小規模な畑作や狩猟採集や漁労をしながら細々と生活していて、春になれば梅や桃や桜や木蓮や辛夷こぶしの花が咲いたり柳が青々とした葉をつけたりするのを、少しさびしくはあるが誰に邪魔されるでもなく独り心ゆくまで眺めているというような光景を想像して詠んだ。


〔参考句〕

 ほうらいの山まつりせむ老の春 蕪村

 更衣母なん藤原氏也けり 同

 冬鶯ふゆうぐひすむかし王維が垣根かな 同

 山里や一斗の粟に貧ならず 夏目漱石

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