朝の落蝉夕の風に動きけり

 あした落蝉おちぜみゆふべかぜうごきけり


〔語釈〕

あした」はあさ

「落(ち)蝉」は地面に落ちて飛べなくなった蝉あるいは死んだ蝉(夏)。季語に認定されているようだが、yahoo!辞書で検索をかけてもその項目は見つからなかった。近代以降の比較的最近に作られた語かと想像する。


〔訳例〕朝に力尽きて地面に落ちた蝉がゆうべの風に吹かれて動くのであった。


 上五かみご(五七五の前のほうの五)が破格の八音というイレギュラーな句。私は定型を破ることに慎重なほうだと思うが、力量不足で、考えても五七五の枠にうまくおさめることができなかった。


 句は、死んだ蝉が夕べの風に吹かれて動いているのを目の当たりにして作ったもの。朝に地面に落ちた蝉が夕方まで変わらずにあるものなのかわからないが、対句ついく(類似した2つの句を並べて置く技法)のような趣向にするためにそういう設定にした。


〔参考句〕

 月光西にわたれば花影東に歩むかな 蕪村

 夜桃林を出て暁嵯峨の桜人 同

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