15歳で処刑人になった私の日記

@talestott

1日目 つらいです。 評価:●●●●● 最悪

 長い一日だったので、どこから書けばいいのでしょうか。朝起きたときから書けばいいのでしょうか。この日記が魔女という概念がないかもしれないはるか後世の人に読まれることも想定すべきでしょうか。


 …ここ数年くらいで魔女の存在がなくなるわけがないと思っていましたけど、正直あの処刑の光景を見たら怪しいですね。

  もし魔女のいない世界に住んでる方がこの日記を読んでもいいように、少し世界観(自分の生きてる世界を世界観って呼ぶの少し面白いですね)も交えていこうと思います。



  お母さん達が処刑人の方に連れていかれて、私が追いかけて5日経ちました。私は魔女でありながら魔力に恵まれなかった落ちこぼれだったため、ホウキではなく、小走りで行きました。たとえ魔力があったとしても魔法は使わなかったと思います。


 羊小屋を中継しながら、なんとか憧れだったはずの城下町にたどり着きました。町の人に白髪で三つ編み、ストールを巻いている女性は来てないかとそれとなく尋ねたら、そっぽ向かれてしまいました。


 噂通り都会人は冷たいと思っていたのですが、冷静に考えたらあの地点で魔女とバレていたのかもしれませんね(それよりも今の私は果たして冷静なのでしょうか)。


 それでも訊き込みをしていたら後ろから、まるで絵本の毛むくじゃらのオークのような男に頭をコツンとされました。都会はすごいなと思いました。彼は【鳥葬】さん。処刑人だったそうです。まずいと思ったのですが、見た目に打って変わってとても親切な男性でした(今、彼の家の部屋を借りているのでこの日記が読まれたらヤバいです!)。



 彼は私が魔女と見破ったのにも関わらず部屋のベッドで休むようにと言ってくれました。しかしそうしている間に魔女狩りが行われ、お母さんが死ぬかもしれません。焦って外に出た私は火傷か何かで目がなくなってた服のかわいい少女と対面してしまいました。申し訳ないのですがかなり不気味です。


 どうやら彼女も処刑人らしく、年下が人を殺してるのかということにかなり驚きましたが最も驚いたのは彼女自身が魔女だったことです。私も魔女の端くれなので微量の魔力を感じることができます。

 すぐに【鳥葬】さんが駆けつけて、その少女と【鳥葬】さんが何やら話していました。その間にお母さんを探してもよかったのですが、迷ってるうちに【鳥葬】さんに物騒な刃物と耳栓を渡されました。

 どうやら私に魔女の疑惑をかかっているところを【鳥葬】さんにフォローしていただいたようで、新しく雇った弟子と紹介してくれたようです。

 しかしそれでも疑惑は晴れず、私は急遽処刑を行わなければいけなくなってしまったのです。



 言っておきますが、人殺しなんてしたくなかったんです。お母さんに会うためには生きなきゃいけない。生きるためには仕方なかったのです。本当に不本意でしたが、私は同胞の魔女を殺すことを決意しました。




 結論から言うと私が殺したのはお母さんでした。

 あっさり死ねばまだ良かったのですが、お母さん。全然死ななかったんです。


 

 私の殺し方が悪かったのでしょうね。首を狙ったのですが、出てる血の量が尋常じゃない割に意識が途切れず、手首や胸を刺しても。どこを刺してもどこを刺してもお母さんがなかなか死ななかったのです。目を合わせたら絶対刺せないと思ったので顔はそらしました。一刺し一刺しの感触が最悪で吐き気を催しましたが、お母さんをこの苦痛の中に閉じ込めておく方が残酷だと思ったのです。


 お母さんと対面した時のことはふわふわしててよく覚えてないのですが、とにかく私はお母さんを殺すことをかなり抵抗したと思います。ですが周りの観衆や、進行を務めていたあの処刑人の少女がそれを許してくれなかったのです。

 

 頑張りが功を奏したのか私の魔女疑惑が晴れました。今は【鳥葬】さんの家の屋根裏を借りています。非常に疲れたので今すぐ休みたいところなのですが、こうやって今の私を書き記しておかないと時間に置いて行かれそうな気がしたのです。


 私は思いのほか冷静です。ベッドも気持ちいいですけど、お母さんが死んだので、やっぱり今日は最悪な1日なんでしょうね。おやすみなさい。

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