それから

何日もしないうちに、アイはまた学校へ通えるようになった。

そのころには「十年前みたいに看板の事故が!」なんて噂が広まっていたけど、すぐに忘れられそう。事故にあったアイたちが元気にしているんだし。

校長先生は正気に戻って、最近やっていたことをみんなに謝った。

ああだこうだいわれることはあるけど、元々いい先生だったしだんだん許されていくはず。そのうち「いつかはバカなことをしちゃってさ!」なんて笑い話ができるようになるんだと思う。

そして、ぼくたちは――ある放課後、また正門に来ていた。

もう神様作りの仕事はない。それでも、楽しい場所なのでついつい足が向いてしまう。

「今日もやっとるねぇ」

ガシが正門のそばを笑いながらながめる。

池で動物たちが釣りをしていた。今日も大漁みたい。災いの魚は正門を通る人に水を吹き付けるどころじゃなさそう。

「池も動物もみんなには見えない。それが残念だわ」

「絵本みたいだし、みんな見たら喜びそうね」

ナンナとニッシンは、ほほ笑みながらいいあう。

今もぼくたちだけには池と動物たちとブドウの木が見える。もちろんあのお守りを持っているお陰。ウミノヒメは疲れすぎていたせいでぼくたちから回収し忘れたのかもしれない。

(災いが広まることはなくなった。そうさせたのはぼくたち! 成果が見えるのっていいなあ)

ぼくはひそかに誇らしく思っていた。クラスだとぼくはマンガでみんなを笑わせられないこともあるけど、ここでは違う。みんなの役に立っている。

「見ろよ。神様先生もとい普通先生だ」

校舎の玄関で美々子先生が手を振っていた。あれからウミノヒメが乗り移ったりすることはない。すっかり元どおりだ。ぼくたちは手を振り返した。

「そういえば、謎が一つ残っているんだけど。どうして、ウミノヒメは取り憑く相手にぼくたちの先生を選んだんだろう」

「いわれてみるとそうだわ」

ぼくとナンナが首をひねって、ガシとニッシンが口々にいう。

「ダジャレだ! ミミコだから、名前が巫女っぽいだろ」

「こういうのはどう? 実は先生が元から霊能力者で、ウミノヒメっていう神様が乗り移ったことにしてあたしたちへ不思議な道具を使わせたとか」

ぼくたち五年一組三班はマンガを書くのが趣味で、話を考えることになれている。いろんな説が出そう。

「これだけでもマンガのネタになるわね」

「あの動物たちも、見てるとネタが出そうだしね」

ぼくたちは、そんなことを話しつつ学校から出た。

きっとまたマンガに書きたいことを思いつく。帰ってからも書ける。明日学校でも書ける。できあがったら、仲間たちや学校のみんなに見てもらおう!


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五年一組三班と地下の呪い 大葉よしはる @y-ohba

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