そして・・・

そして翌日、俺と雪姫は何かぎこちない状態のまま朝食を食べ、そのままホテルをチェックアウト。沖縄観光に出掛けた。


「白石、昨日はすまない。でも俺には家族がいるから・・・でも今後お前の仕事に影響があったら俺が責任取る」


首里城を訪れる直前、俺は雪姫にそう言った。そして雪姫は、


「大丈夫。でも今日は私が相川くんの奥さんになるよ?」


と俺に明るく振る舞っていた。取りあえず立ち直ってよかった。


俺と雪姫はこう話して首里城を訪れる。首里城ではまず俺が「Twitterとブログに沖縄に行った画像を載せたい」と言った雪姫を撮影し、最後は2ショットしてもらった。写真は2人の携帯に保存されたけど、これバレたら絶対麻衣に叱られるな。


首里城を出た俺と雪姫は、那覇空港に向かった。昼食はまた那覇空港内のレストラン。そして昼食後は出発の準備があり、夕方の便で東京に戻った。家に戻ったのは夜の9時頃だった。そして携帯を見ると雪姫からLINEが届いていた。その内容は、


「相川くん、4日間付き合ってくれてありがとう。今度は奥さんと沖縄に行ってください」


だった。そして俺は、


「こちらこそ色々ありがとう。暇があったらまた沖縄に行くよ」


と返信をし、さっき更新したばかりだという、沖縄での撮影と観光の内容が載せられた雪姫のブログを見た。




◇ ◇ ◇




8月13日、麻衣は元気な女の子を産んだ。俺は娘に「優衣奈ゆいな」と名付けた。最初は2人の名前から、「優衣ゆい」と名付けるつもりだったが、姉と同じ名前になってしまうのでボツに。で、結局一字足して優衣奈という名前にした。


俺も麻衣も、優衣奈が産まれてからはベッタリだった。親というものはみんなそうなんだな。


そして、俺と麻衣は優衣奈の誕生を機に、一戸建てを買う準備を始めた。




◇ ◇ ◇




それから長い月日が経った。4月、俺は大学卒業以来15年間マネージャーとして活動した事務所を離れ、新しい声優事務所を立ち上げた。そして俺はその事務所の社長になった。所属している声優は新人を含め20人を超える。その中には、事務所には数年前に結婚し、ゆうという名前の一人娘を持つ雪姫もいる。雪姫は結婚を機に第一線から退き、今の仕事はラジオの朗読番組と、テレビ番組のナレーションくらいだ。




そして優衣奈はこの春から中学生になり、次女の麻里まりも小学4年生、三女の雪乃ゆきのも小学生になった。麻衣は育児の傍ら、引き続き女優業を続け、映画やドラマに出演している。


自宅は都内のある住宅地にある数億円で買った一戸建てだ。もうここに引っ越して5年になる。麻衣は優衣奈の出産後、ネットで衣料品や化粧品の販売を始めた。その販売でかなりの収益を得たおかげで家を買うことにはそこまで苦労しなかった。




ツバキガールズの1期生・2期生・3期生はもう全員結婚し、ほとんどのメンバーは子供もいる。俺や麻衣とはみんな、家族ぐるみの付き合いだ。ゴールデンウィークには沙織さんの家族と北海道へ、夏休みには遥の家族と沖縄に旅行に行く予定だ。そして優衣姉も優里も結婚し、それぞれ子供を授かり、子供は立派に成長している。




◇ ◇ ◇




4月末、俺と雪姫はイベントのため名古屋に1泊した。俺は雪姫が結婚してから、家族ぐるみの付き合いをしている。


イベントの内容は雪姫の朗読劇と俺と雪姫のトークショーだった。声優が事務所の社長とトークショーするのは珍しい。こんな企画、誰が考えたんだ。企画考えた奴の顔を見たいよ・・・って、よく考えたらこの企画を考えたのは俺だった。そして、客層は主に家族連れで、イベントが行われたホールは満員だった。




イベントが終わり、俺と雪姫は名古屋駅近くのホテルに向かった。当然部屋は一人部屋だ。そして荷物を部屋にまとめて、すぐに夕食のため雪姫と合流する。


夕食はホテル内のレストランだ。俺は味噌カツ定食を、雪姫はひつまぶしを頼んだ。食事中、レストランで俺は雪姫にこう言った。


「雪姫、お前が好きだ。付き合ってくれ」


そう俺が言うと雪姫は、


「・・・は?何言ってんの?」


と俺を冷たくあしらった。そして俺は、


「・・・冗談に決まってるだろ。お互いもう家族がいるんだぞ。そんなこと真顔で言えねぇよ。もしそんなこと本気で言ったら麻衣に殺されるわ」


と言う。そして、


「雪姫ちゃん、冬休みにお互いの家族で旅行行かないか?これはマジだ」


と言った。すると雪姫は、


「・・・そうだね。お互い暇な日を探して行きましょう。でも、場所はどこにするの?」


と言う。俺は、


「そうだなぁ・・・大阪がいいんじゃないか。麻衣の帰省も兼ねられるし」


と言った。そして、


「そうだね。でも私は大阪より奈良や京都の方が好きかな」


と雪姫は言った。俺は、


「そうか。お前、意外と信心深いんだな」


と雪姫にこう返した。雪姫は俺の問いかけに、


「ん?まぁね。あとお城も好き」


と言った。




そして翌日、俺と雪姫は一日暇だったので、名古屋でデートをすることにした。悪意はない。ただ、昔を思い出しただけだ。そして、意外と時間はある。


「雪姫、とりあえず名古屋城と犬山城に行くぞ。お前お城好きだろ。岐阜城はちょっと遠いから行けないけどな」


と俺は雪姫に言った。すると雪姫は、


「うん、ありがとう。今日だけは私が優くんの奥さんだよ!」


と俺に笑顔で返した。

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アイドル女子寮奮戦記 青獅子 @bluelion

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