父親「異世界にバイオテロしかけてやる」
ちびまるフォイ
取り戻してからが最大の修羅場
娘が失踪してから1年。
ウイルス治療の第一人者である父親は必死に探していた。
「これだけ世界中を探しても見つからないなんて……。
あとはもう異世界にいっているとしか考えられない!」
「先生! 異世界で見つかりました!」
「やっぱりか!」
異世界に娘を見つけるところまでは進められたものの呼び戻すことはできなかった。
「異世界は魔王による強力な結界が張られていて、
異世界に通じるゲート装置も不安定にさせられてるんです」
「娘を連れてくることはできないのか」
「小さなゲートを開けることくらいはできるんですが……。
とても人間が通れるサイズじゃなくって……」
「十分だ。ウイルスさえ通れればな」
「なにをする気なんですか?」
「ウイルスで魔王を倒す。そうすれば平和になるはずだろう。
異世界にはウイルスなんて概念はないからな」
父親はウイルスの研究をはじめた。
もとは、娘の持病を治すためにウイルス研究をはじめた父親だったが
今は治すウイルスではなく命を奪うウイルスを作ることに。
けれど、ウイルス研究は難航した。
「くそっ! これじゃダメだ!」
「先生、ウイルスを異世界に送らないんですか?」
「これじゃ送ることはできない……」
「はぁ。これなんかいいんじゃないですか?
どんな異生物でもたちどころに殺しちゃうウイルスなんでしょう?
魔王なんてひとたまりもないじゃないですか」
「ああ、その通りだ。だが……」
強力なウイルス開発は序盤で完成した。
でも父親はそのウイルスを異世界に送り込むことはない。
「だが、強すぎて娘をも殺しかねない……これじゃダメなんだ」
「それじゃこれはどうですか?
どくどくウイルスで、感染者をじわじわ弱らせる。
しかも人間にはきかないので安全じゃないですか。完璧!」
「それもダメだ」
「ええ!? どうしてですか!?」
「弱すぎるんだよ。人に無害になればなるほど威力が弱まってしまう」
いくら毒だといっても魔王だって回復くらいする。
そう考えるとちまちまダメージを与えるウイルスなんて効果は薄い。
「もうだめだ! 娘とは永遠に離れ離れになってしまうのか!
あの子はまだ彼氏もできてないのに! 不憫すぎる!」
頭をかかえた父親の前に、ずらりとウイルス研究者たちが並んだ。
「あなたたちは……?」
「娘さんのこと聞きましたよ。我々も手伝わせてください」
「ひとりでできないことでも、みんなで力を合わせればきっと完成できます」
「私たちはウイルス連合軍。みんなで最強のウイルスを作りましょう」
「はい!!」
世界がひとつになった瞬間だった。
世界の英知が終結した結果、
魔物だけを仕留めるウイルス「ニフラムウイルス」が完成した。
「みなさん、協力ほんとうにありがとうございます!
これで娘はきっと魔王の魔の手から救われます!」
「さぁ、早く異世界にウイルスを送りましょう」
「はい!!」
二フラムウイルスは小さなゲートの入り口を通じて異世界へと散布された。
しばらくして、異世界のゲートが大きくなったのがわかった。
「おお! ゲートの入り口が大きくなっている!
ついに魔王が死んで結界が解かれたんだ!!」
父親はついに娘を救い出すことに成功した。
世界からは惜しみない拍手が送られる。
「ああ、本当にここまでウイルス研究を頑張ってよかった!!」
「先生、魔王の死因を調べてたんですが、大変なことがわかりました」
「二フラムウイルスについてか? それはもういい。
こうして、娘を無傷で救い出すことができたのだから! ははは!」
「あの……魔王の死因、エイズウイルスだったんです……」
娘の持病を知っている父親はすぐに家族会議を開いた。
父親「異世界にバイオテロしかけてやる」 ちびまるフォイ @firestorage
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