ほらお前の背中にもーー!!!

ちびまるフォイ

どうやったら自分の背中を見られるの?

「俺、君に恋しちゃったみたいだ」


俺から見てもイケメンの男がみるからにモテない女に声をかけていた。


「ねぇ、これからゆっくりできるところにいかない?」


「あの……背中見せてもらっていいですか……///」


イケメンはくるりと1周回ったら、女にビンタされていた。


「この●●●●が!! 二度と声かけんじゃねぇぞ!!」

※未成年の読者に対して最大限の配慮(笑)をしております。


「え、ええ~~……」


イケメンは成功率100%のナンパを見事にスカして、捨てられた子犬のような顔になっていた。

イケメンの背中には「浮気性」「嘘つき」などが彫られていた。


「あの、背中になにか書かれてますよ?」


「ええ!? マジかよ!? 入れ墨レビューされてんの!?

 なんて!? なんて書いてあるんだよ!」


「それは……」


言えない。すっごい俺が怒られそう。


「イケメン、って書いてます」


「だよねぇ~~」


俺の褒め言葉にイケメンは気分を良くしたのかまたナンパしにいった。


「入れ墨……レビュー……?」


ネットで調べてはじめて存在を知った。



"入れ墨レビュー"

知らず知らずのうちに他人により刻まれる背中のレビュー。

その人への評価が背中に刻まれる。

特定の動作をするだけで、対象へレビューを刻むことができる。



「えええ!? こんなことがあったのか!?」


レビューのやり方はカンタンだった。

町を見てみると、みんな背中にレビューが彫られている。


好意的なレビューが刻まれている人も、批判的なレビューの人もさまざま。


でも、好意的なレビューが背中に刻まれている人には

いろんな人がニコニコしながら近寄っているのに

批判レビューが多い人には誰にも近づいてこない。なんだこの差。


「お、俺はどっちなんだ……! みんなからどう思われてるんだ……!?」


俺の背中にはなんて刻まれているのか。

これまでの人生は背中のレビュー的にはどうなんだ。


好意的なレビューが多いから、人生イージーモードだったのか。

実は批判的なレビューが多い、ハードモードの設定だったのか。


気になる。

気になる。

気になる。


「ってそうだ!! 鏡を見ればいいじゃん!」


すぐさま家に帰って、姿見の前に立ち自慢の背中を映した。


「見えないな……」


首の可動域に限界があるので背中は見れない。

わざわざ2枚目の鏡を買ってきて、合わせ鏡で背中を見る。



「……あれ? 見えないぞ?」


やり方を確かめていると、ネットで答えは出ていた。


・入れ墨レビューは鏡に映りません。

・入れ墨レビューはカメラに映りません。

。入れ墨レビューは肉眼でしか見えません。


「はぁ!? それじゃ確かめられないじゃん!」


スマホのカメラで背中撮ってみようかと思ったが無駄だった。


「あ、そうだ。友達になんて書いているか教えてもらえればいい」


友達を呼ぼうと電話をかける前に指がとまった。



「そういえば、同じことを前にもやったような……?」


前にイケメンが俺に背中を見せて尋ねたことがある。

"なんて書いてあるんだよ"と聞かれて俺は……ウソをついた。


「俺が友達を呼んでも、友達の答えが真実かどうか確かめる方法はない……。

 まして、実は友達が入れ墨掘っていた人だとしたら、なおさら答えない……」


もう誰も信じられない。


俺の話で笑っていた人が、裏で「つまんない男」と俺に刻んだかもしれない。

両思いだと思っていた人が、裏で「ストーカー」と俺に刻んだかもしれない。


俺はみんなから好かれているのか嫌われているのか。

背中で確かめる方法なんてない。


「うあああ!! 俺はいったいどっちなんだぁぁぁ!!!」


追い詰められた俺はその後、病院へとかつぎこまれた。





「あなたもムチャをしますね……」


治療が終わると医者は顔をくもらせた。


「あなた異常ですよ。いくら自分の評価が気になるからといって

 自分の背中を包丁でひきはがして確かめるなんて……」


「自分の評価が見えない不安にかられ続ける恐怖がなくなるなら

 背中を切りはがす痛みなんてぜんぜん平気です」


「それで、あなたの背中にはなんて書いてあったんですか?」




「なにもなかった。誰からもレビューされてなかったんです」


背中をはがした痛みよりも強烈な痛みが待っていたとは思わなかった。

医者はせめて1つはと、俺の背中にレビューを刻んだ。



"かわいそうな男"


と。

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