2.人魚姫のひかり

 深い青のワンピースと、これでもかというほど美しい髪。それに、整った顔立ち。まるで作り物のようだと感じた。

 見た目年齢は十五歳くらいか。

「お名前は?」

 マリアさんが少女に問いかける。

「……音海おとみひかり」

「ひかりちゃんね」


 ああ、もしかしたら十五歳にもなっていないかもしれない。十五歳にしては声が幼すぎる気がする。

「彼は柴谷しばたにしょうさん。わたしはマリア・フォアネよ。よろしく」

「……よろしく……」

 人見知りなのか、単にこういう子なのか、ひかりちゃんは暗い様子であまり話してくれない。


「……ええと、翔さん。ほんとうは翔さんといっしょにここの様子を見に行きたかったんですけど、ひかりちゃんが心配なのでわたしは残りますね。あなたは、ここがどんなところなのか見てきてください」

 まるで姉や母のようにひかりちゃんの肩をかかえて、マリアさんがそう言う。

「あ、はい。わかりました。じゃあ、ここで待っててください。ひかりちゃんのことは……」

「ええ、わたしに任せてください」


**


 おじいちゃんが言った。

「きみは光なんだよ。みんなを幸せにするすてきな光」


 おばあちゃんが言った。

「あなたは光よ。海を照らすきれいな光」


 おとうさんが言った。

「おまえは光だ。歌を輝かせるあかるい光」


 そして、おかあさんが言った。

「ひかりちゃんは光なの。人魚姫を楽しませるふしぎな光」


 だから、わたしも言う。

「わたしはひかり。あなたを×す、ぶきみなひかり」


**


「あのね、あのね。

 わたしね、ひかりなんだよ。


 あかるくて、きれいで、

 ふしぎで、すてきなひかり!


 でもね、それだけじゃ

 つまらないでしょう?


 だから、わたし、

 ぶきみなひかりになってみたよ。


 どう?

 わたし、ちゃんとできてるかな?」

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