1.塔(2/2)
いくつか階を降り、その都度すべての部屋を開けようとしたが、どこも開かなかった。
さて、とうとう下へ降りる階段がなくなった。一番下の階に着いたのだろう。
ここは他の階とは様子が違う。大きなソファがふたつ、小さなソファがひとつ置かれ、机も用意されている。他の階のように廊下があるのではなく、この階に来るとすぐにこのスペースになっている。
ホールかなにかなのだろうか——部屋を眺めながら思考を巡らせていると、突然うしろから背中をつつかれる。
「ひぃっ……!?」
急なことに驚き、ついおかしな声を出す。ばっと振り返ると、金髪の女性が立っていた。
「あ……急にすみません、びっくりしちゃいましたよね。その……立てますか……?」
あ、日本語を喋れるのか、とどうでもいいことを考える。
「だ、大丈夫です……」
どこかで金髪は遺伝しにくいと聞いたことがあるし、顔立ちからしても、絶対に外国人だとばかり思っていたが、ハーフだったのか。……ん、待てよ。決めつけるのはよくないんじゃないか? 外国人だとしても日本語を喋れる可能性はあるし、染めて整形した日本人という可能性もなくはない。
「ええと……ほんとうに大丈夫ですか……? なにか考えごとをしているようですけど……」
「あ、ああ、その……こ、ここはどこなのかと……少し考えてました……」
我ながら苦しい言い訳だ、と、思ったのだが。
「あ、なるほど。ええ、そうですね、どこなんでしょう……目が覚めたら知らない部屋にいたので階段をおりていたら、あなたに出会ったんです」
「僕もほとんど同じです。目が覚めたらベッドで寝ていて、しばらく考えたんですけど、やっぱりなにかしようと思って、それで……」
「わあ、すごい偶然! わたしもそんな感じだったんですよ。はじめは、怖いし、動かないでじっとしていようと思っていたんです。でも、どうしてかどこか行ってみようと思えて……それであなたに会えるなんて、もしかしたら運命なのかもしれませんね!」
キャッキャとはしゃぐ女性。名前すら知らないのだが、これで良いのだろうか。
いや、そうだ。今はそれどころじゃない。なんとかしてここから出ないと。
「わたしはマリア・フォアネ。あなたは?」
ああ、自己紹介されてしまった。それなら、こちらも名乗らないと。
「……僕は
「ええ、よろしくお願いします、翔さん。わたしはもう少しここで休みますけど、翔さんはどうしますか?」
「僕は少しここについて調べてみようと思います。マリアさんも来ますか?」
一人になるのが心細くて、ついそんなことを言ってしまった。もし危険なら、女性を巻き込むわけには——。
「ふふ、それじゃあご一緒するわ」
ふわふわした金髪を揺らして、にっこりと微笑む。なんというか、さっきから思ってはいたけど、明らかに日本人ではない。容姿も、性格も。
「まず、上の階を見て回る? それとも——」
突然、言葉が止まる。マリアさんの視線を追うと、今ちょうど階段から降りてきたところであろう、少女が立っていた。
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