第3話 タナちゃんとサリー先輩 Ⅲ
◆Ⅲ
その日を終えて、わたしは一人、部屋のベッドで寝転がった。
手のひらを天井にかざす。
『これでいいのだ』
サリー先輩が走り書きした言葉が、まだらに薄らいで、消えた。
「サリー先輩、寝たんだ」
わたしはまどろみの中、独りごちる。ポエティックな気持ちだった。言葉が口をつく。それに語ることは必要なことだった。
「死神が眠ると、その日、作ったものは消えてなくなる。
理由はわからないけど、死神はなにも残せない。
だから、覚えていなければならない。
名前。
わたしは彼の名前を胸に刻む。
忘れない。
これから何人、看取るとして、
これから何人、食べるとして、
その度に、名前を刻んでいこう。
いつか、覚えきれないときがくる。
そのときが、わたしがわたしでなくなったときだ。
きっと、時間には抗えない。
だけど、わたしはわたしであり続けたい」
死神が眠るとき、食器は磨かれた姿でパントリーに戻り、汚れたテーブルクロスも純白に返った。今日あったすべてのことが、死神の胸のうちにしか残らない。
死神ダイヤル かんらくらんか @kanraku_ranka
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