時速100キロの宇宙
なにも映さない鏡ほど怖いものはない。
いや、正確にいうと「闇」しか映っていない鏡だ。
別に文学的な言い回しをしたいわけでも、迂遠な比喩を使っているわけでもない。
夜も更けた高速道路。辺りにはなにもなく月明かりさえない。
僕の車の、前にも後ろにも、一台も走っていない。
そこにあるのは、闇。
一寸先どころか、窓の外さえ、なにも見えない。
僕はなんだか寂しくなって、ふとミラーを覗いた。
そこにあるのは、闇。
なにも映さない鏡ほど怖いものはない。
僕はそう思った。
本来鏡とは、何かを映すためにあるはずのものだ。
だからこそ、なにも映っていない、漆黒の鏡を見て、僕は寒気がした。
いったい僕はどこから来て、何者で、そしてどこへ行くのか。
僕だけがいない高速道路を、僕だけが走っている。
まるで宇宙の中を独りで彷徨うかのような寂しさを覚えた。
視界に広がる、闇。
闇に広がる、孤独。
だれかいませんか。ぼくはここにいます。
この暗い宇宙のどこかにいるだれかを探したくて、そしてこの発信を届けたくて、僕はライトをハイビームに切り替えた。
かんじょうの ふきだまり 宇曽川 嘘 @Lie-Usokawa
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