夜とお酒

夜とお酒は等しく人を酔わせる。


これは僕が前から思っていたことだ。

人はお酒を飲むと酔う。


人は酔うといつも話さないようなことを話し、いつもとらないような行動をとり、いつも考えないようなことを考える。


……それって夜も同じではないだろうか。


プロポーズをするのも、修学旅行で恋バナをするのも、将来を語り合うのも、みんな夜だ。


お酒を飲まなくても、みんな夜だ。


だから僕は夜にお酒を飲むのは余計なんじゃないかと思う。


お酒を飲まないと酔えないのは、夜に酔えない人だ。


朝も夜も関係なく齷齪働き、夜の余韻に浸れない。そんな人が宵に酔いを求めて酌を汲む。ひとときの酔いを求めて。


そして朝になると酔いは醒めてしまう。お酒も夜も。



夜とお酒は等しく人を酔わせる。

今宵僕は、長い夜を、ショートグラスで味わっていたい。

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