かんじょうの ふきだまり

宇曽川 嘘

ものかくものかき

寝るのを忘れて一晩中ものを書きたい。


そんな夜が、ある。




特に何か書きたいものがあるわけではない。


読み手を感動させる小説も、万人から共感されるラブソングも、「いいね!」を押したくなるようなブログも、僕には書けない。




それでも、そんな僕でも、寝るのを忘れて一晩中ものを書きたくなるような夜が、ある。




それは一晩中だれかと話していたい、という感情と似ているかもしれない。


まだ話したいことがある。でも夜は更ける。まだ朝が来て欲しくない。




話しているうちに、自分が何を話しているのか、何を話したかったのかも忘れ、それでも、朝まで話していたい。そんな感情と似ているのかもしれない。




でも話すことと違うところがある。


それは聞いてくれる者がいないことだ。


だれにともなく、たとえ聞いてくれる者がいなくても、それでも、僕は書きたい。


書くものがなくても、書くものを欠いていても、僕は朝まで何かを書いていたい。




もの欠く物書き、僕はそんなつまらない洒落しか書くことができない。

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