「俺が姫を支え、守り抜きます」
「丁度、朝日が昇ってきたところです。深く吸い込んで、新しい一日の始まりの力を、体に取り込めば気も晴れるでしょう」
朔は微笑み膝を進め、胸の奥に溜まっていた重苦しいものを吐き出した。かわりに、体中に一日の始まりの空気を吸い込んだ。
そんな朔を、真夏が包むような瞳で見つめている。
(不思議)
朔はまた、同じことを思った。真夏の視線のあたたかさが、自分の心を支えてくれる。立ち向かおうとする力を与えてくれる。
朔は真夏に顔を向けた。
「これから、色々と大変なことになると思うわ」
言葉とは裏腹に、朔の声は晴れ晴れとしていた。
(きっと、大丈夫)
真夏のやわらかな瞳が、自分をまっすぐに見つめる姿が、朔にそう思わせてくれた。
(しっかりしなくては)
朔の心の声が聞こえたかのように、真夏は眉をそびやかし、勇気づけるように硬い決意を感じさせる声音で言った。
「俺が、ついています」
その一言は、朔の魂を揺さぶった。体の内側から、熱いものが込み上げてくるのを感じる。
「俺が姫を支え、守り抜きます」
「あっ」
真夏は朔の手を引き寄せ、抱きしめた。
「俺が必ず、守り抜く」
誓いのような真夏の声が、朔の体に降り注ぐ。それを心地よく受け止めながら、朔はそっと息を吐いた。
(きっと、大丈夫)
真夏の与えてくれた、根拠の無い確信と安堵を胸に抱えて、心の裡でつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます