「俺が姫を支え、守り抜きます」

「丁度、朝日が昇ってきたところです。深く吸い込んで、新しい一日の始まりの力を、体に取り込めば気も晴れるでしょう」


 朔は微笑み膝を進め、胸の奥に溜まっていた重苦しいものを吐き出した。かわりに、体中に一日の始まりの空気を吸い込んだ。


 そんな朔を、真夏が包むような瞳で見つめている。


(不思議)


 朔はまた、同じことを思った。真夏の視線のあたたかさが、自分の心を支えてくれる。立ち向かおうとする力を与えてくれる。


 朔は真夏に顔を向けた。


「これから、色々と大変なことになると思うわ」


 言葉とは裏腹に、朔の声は晴れ晴れとしていた。


(きっと、大丈夫)


 真夏のやわらかな瞳が、自分をまっすぐに見つめる姿が、朔にそう思わせてくれた。


(しっかりしなくては)


 朔の心の声が聞こえたかのように、真夏は眉をそびやかし、勇気づけるように硬い決意を感じさせる声音で言った。


「俺が、ついています」


 その一言は、朔の魂を揺さぶった。体の内側から、熱いものが込み上げてくるのを感じる。


「俺が姫を支え、守り抜きます」


「あっ」


 真夏は朔の手を引き寄せ、抱きしめた。


「俺が必ず、守り抜く」


 誓いのような真夏の声が、朔の体に降り注ぐ。それを心地よく受け止めながら、朔はそっと息を吐いた。


(きっと、大丈夫)


 真夏の与えてくれた、根拠の無い確信と安堵を胸に抱えて、心の裡でつぶやいた。

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