薬と花と

 寒い時期になると人間達は花の入ったお粥を食べる。白や黄色や紫色の花がとてもきれいで、どんな味なのか私はずっと知りたかった。

 この家に来て随分と経ってしっかりしてきたからとついにこの日、人間から花のお粥をひとくち貰う事が出来た。

 それなのに、そのお粥にはほとんど味がなかった。かろうじてわかったのは、翡翠輝石のような清涼な香りとほのかな苦味だった。

 人間達はみんなこれが薬だと言うけれど、このきれいな薬は人間にとって美味しい物なのだろうか。不思議に思いながら、私も自分のために用意された翡翠輝石をひとくち囓る。

 そうか、かわりに人間はこの甘く苦い石の味を知る事は出来ない。同じ味を感じられないのは、少し寂しい。

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