満月のパイ

 秋の満月の夜、この日はお月見をしようとミモザのパイを用意した。

 このパイは様々な果物を詰め込んで焼き、その上に砂糖漬けのミモザを敷き詰めた物だ。毎年違う味で、香ばしく甘いパイを神様は毎年楽しみにしている。

 手の平の上に乗ってしまう満月を模したパイ。軽やかな歯触りの生地と中に詰まった果物を味わう。どうやら今年は林檎や蜜柑以外に花梨や無花果も入っているようで、ほのかな苦味とねっとりとした甘みがある。

 月を眺めながらぼんやりとパイを囓って、ふと隣にいる神様を見る。すると、パイを食べるのに夢中になって月など目に入っていないようだった。

 その姿を見て、自分もこんな風にお菓子に夢中な頃があったなと懐かしくなった。

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