造花の耳飾りの人形

 ある日僕は人形と買い物に出かけた。この子を迎えてからだいぶ経った。おそらく、寿命を迎えるまで間は無いだろう。

 ふたりでアクセサリーショップに入り、耳飾りを見る。様々な素材の、様々な形の耳飾りが並んでいた。

「これを分けたい人、いる?」

 人形が僕に訊ねる。僕はいると即答した。

 そして、手に取ったのは布で出来た赤い造花の耳飾り。僕の人形の瞳と同じ色だ。

 耳飾りを買い、人形に誰に渡すの? なんてからかわれながら店を出る。それから喫茶店に入り席について先程のイヤリングを取り出す。

「片方あげる」

 それを差し出すと、人形は真っ赤になった。

「それは、私じゃダメだよ」

 わかっている。でも、僕はこの人形に永遠を約束したかった。

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