君はここにいない

 私の人形が寿命を迎えてしばらく。私は何日もこの子の事を眺めて過ごした。食事もあまりせず、夜眠る時は抱きしめて寝ていた。

 そんな中、本棚に入っているフォトアルバムが目に入った。それを開くと、この子と一緒に色々な所へ出かけた時の記念写真が沢山貼られていた。

 笑顔のこの子が写った写真を夢中で何枚も見返す。そうしている内に、もう一度この場所を訪れたいと思うようになった。


 原付に乗って、私はあの事訪れた場所を何泊もしながら巡る事にした。

 どこへ行ってもあの事の思い出の欠片があって、思い出と遊ぶのは楽しかった。けれども、もう一度写真を撮ると胸がチクリとした。どんなに周りを見渡しても、あの子の姿はどこにも無いのだ。

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