本を食む

 ここは沢山の人形が飾られた博物館。どの人形も主人の愛を一身に受け、幸せのままにその生涯を閉じたのが目に見えてわかるようだった。ここに来るのが何度目かはわからないけれども、来る度に僕も人形が欲しいと思ってしまう。それが叶わないことだとわかっているのに。

 館内をゆっくりと何周かした後外に出ると、太陽が真上に輝いていて、お昼時だというのを知らせていた。

 人形の博物館から少し離れた場所にある公園へ行き、ベンチに腰掛ける。他のベンチにもちらほらと人が座って居て、お弁当を食べている人もいた。僕も鞄の中から古本屋で買ってきた一冊の古書を出す。

 微かに焦げたような匂いがする。僕は大きく口を開けて、本にかぶりついた。

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