人形の夢想

 今日のおやつの硫砒鉄鉱を食べながら、本を読む。この本は私のご主人様がなんとなく買ってきたと言っていたっけ。じっくりと時間をかけて文字を追い、読み終わると現実に戻る時に気怠さを感じた。

 この本の作者はどんな人だろうと、袖の部分に書かれたプロフィールを見た。目に入った名前は私でも知っている物で、非常に人気のある作家だと聞いた。

 人気作家だというのがわかったので流し見て本を閉じようとした時、ある単語が目に入った。

 プロフィールの末尾に、確かに【人形】と書かれていた。

 この本は私と同じ人形が書いたのか。でも、私たちの寿命は長くはない。どうやってこの人は……

 思案し、私も小説が書けるのでは無いかという空想をした。

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