憧れにくちづけを

 絹のような髪を散らし、私の人形が眠っている。明かりを落とした照明の下で、じっとその様を見る。整った容貌、ふっくらとした唇。話す時や食べる時、柔らかく動くその顔が、本当に柔らかいのかどうかが気になった。

 いや、本当は硬いのだというのを知っている。指で触れても、ひやりとして弾力はないのだ。それでも私は試したくなった。呼吸も無く、うっすらと開いた人形の唇に指で触れる。やはり硬い。それを確認してから、そこに口づけた。

 ああ、唇で触れてみても、人形は硬いのだ。鼻をくすぐる土の香りが人とは違う物だと主張していた。

 私の愛おしい人形。君の為に、君が食べる宝石を明日も沢山用意しよう。だから、また笑顔を見せておくれ。

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