賢者の石

 僕の育てている人形は、きれいな赤い髪をしている。その髪を保つために食べさせているのは、大体の場合は真っ赤な辰砂だ。

 ある時、僕は大事な人形が食べている、この石の味が気になった。一欠片拝借して舐めてみよう。試しにひとくちだけなら許してくれるだろう。そう思って口に持って行ったその時、人形に手を叩かれた。

「だめ。それは毒」

 この石は毒なの? 不思議に思い図鑑を調べると、水銀と硫黄の化合物だとあった。

 確かに、これは人間が食べたら死んでしまう物だろう。けれども人形を見て思った。もしこの子の命が尽きるとき、僕もこの石を食べても良いのではないかと。

 そのいつかは、そんなに遠くはない。焦って試してみる必要は無いんだ。

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